第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

令嬢たちからの無視は、相変わらず続いていた。

視線を合わせれば逸らされ、
声をかければ、聞こえなかったふりをされる。

挙句の果てには——

「……魔女の血が流れているらしいわよ」

ひそひそと、楽しげな声。
噂話として口にするには、あまりにも物騒だ。

実際、
“魔女セイレーンになり得る器”
そう言われたことを思い出す。

だが、まさか。
ここまで広まっているとは思わなかった。

——恐ろしすぎる。

噂は刃物だ。
使う側は軽く、受ける側を深く傷つける。

そして、気づけば1週間が経っていた。

毎日、毎日。

挨拶をして、
形だけのお茶を飲み、
刺繍に向かい、
座学で微笑む。

——静かで、上品で、
息が詰まりそうな日々。

…………。

む、無理!!

体、動かしたい!!
考えるより先に、心が悲鳴を上げた。

けれど剣は、没収されている。
訓練場にも行けない。

——なら。

できることは、ひとつだけだ。

床に手をつく。

腹筋。
腕立て。

音も立てず、誰にも見せず。

筋トレだ!!

そして私は、合間を縫って、とにかく身体を動かした。
廊下の端、人気のない部屋。
短い時間でもいい。筋肉に熱が戻るまで。

——だけど。

やっぱり、剣が振りたい。
思いきり駆け回って、息が切れるまで動きたい。

そんな衝動を胸の奥に押し込めたまま、
今日の授業が始まった。