第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

2組に分かれ、4人ずつの円卓につく。
表情は穏やかに、背筋は伸ばして。
形式ばったお茶会が、静かに始まった。

——良かった。
あのローゼとかいう人物は、別の卓だ。

そう思っただけで、胸の奥に溜まっていた息を、ほんの少し吐き出せた。

カップを持つ指先にまで、視線と作法を意識する。
一口含んだ紅茶は、香りこそ上品なのに、味がほとんど感じられない。
舌が鈍ったわけじゃない。
緊張が、感覚を覆っているだけだ。

添えられた菓子も同じだった。
甘いはずなのに、心まで届いてこない。

……あーあ。

ふと、まったく場違いなことを思い出す。
レオの菓子が食べたい。

『お嬢さーん!』

そう呼びかけながら、コーラルオレンジの髪を揺らす彼。
少し大きな声で、無邪気で、でも手は驚くほど繊細で。
彼が作る料理は、いつだって文句のつけようがなかった。

その記憶を思い浮かべるだけで、
胸の奥に、かすかな温度が戻ってくる。