「午前中は、ここまでになります。
休憩を挟み、午後は刺繍、その後にお茶会のマナーです」
そう告げられた瞬間、肩に入っていた力がふっと抜けた。
……思ったより、消耗している。
(とりあえず、挨拶くらいは……)
そう思い、周囲の令嬢たちに声をかけようと一歩踏み出す。
けれど――
ローゼが、こちらを一切見ずに踵を返した。
その背中を合図にしたかのように、
他の令嬢たちも目を合わせることなく、次々と退室していく。
取り残されたのは、私だけ。
……ああ。
これは、はっきりしている。
(仲良くする気は、ないってことね)
胸の奥が、きゅっと縮む。
貴族社会では、無視は最も静かで、最も残酷な意思表示だ。
「……気にしない、気にしない」
小さく息を吐き、背筋を伸ばす。
ここで俯いたら、それこそ負けだ。
――私は、婚約者候補としてここにいる。
正直王妃になりたくない。
選ばれるかどうかは別として、
伯爵家の名誉のため堂々としていなければならない。
そう自分に言い聞かせ、
一人で自室へと向かった。
けれど。
扉を閉めた瞬間、
胸に溜めていたものが、少しだけ零れ落ちる。
(……やっぱり、しんどい)
王妃教育。
それは、知識や作法だけじゃない。
――人の視線と、悪意に耐えること。
私はそっと窓辺に腰を下ろし、
差し込む光を見つめた。
(ディラン……)
今は、名前を思い浮かべるだけで、
少しだけ心が落ち着くのが悔しい。
……午後も、長くなりそうだ。
休憩を挟み、午後は刺繍、その後にお茶会のマナーです」
そう告げられた瞬間、肩に入っていた力がふっと抜けた。
……思ったより、消耗している。
(とりあえず、挨拶くらいは……)
そう思い、周囲の令嬢たちに声をかけようと一歩踏み出す。
けれど――
ローゼが、こちらを一切見ずに踵を返した。
その背中を合図にしたかのように、
他の令嬢たちも目を合わせることなく、次々と退室していく。
取り残されたのは、私だけ。
……ああ。
これは、はっきりしている。
(仲良くする気は、ないってことね)
胸の奥が、きゅっと縮む。
貴族社会では、無視は最も静かで、最も残酷な意思表示だ。
「……気にしない、気にしない」
小さく息を吐き、背筋を伸ばす。
ここで俯いたら、それこそ負けだ。
――私は、婚約者候補としてここにいる。
正直王妃になりたくない。
選ばれるかどうかは別として、
伯爵家の名誉のため堂々としていなければならない。
そう自分に言い聞かせ、
一人で自室へと向かった。
けれど。
扉を閉めた瞬間、
胸に溜めていたものが、少しだけ零れ落ちる。
(……やっぱり、しんどい)
王妃教育。
それは、知識や作法だけじゃない。
――人の視線と、悪意に耐えること。
私はそっと窓辺に腰を下ろし、
差し込む光を見つめた。
(ディラン……)
今は、名前を思い浮かべるだけで、
少しだけ心が落ち着くのが悔しい。
……午後も、長くなりそうだ。



