顔を上げた瞬間、室内の空気が、わずかに揺れた気がした。
――数拍の沈黙。
「……よろしい」
眼鏡の奥から、教育係が私を見つめる。
「急な参加と聞いていましたが、姿勢、発声、礼の角度。いずれも申し分ありません」
その言葉に、周囲の令嬢たちが小さく息をのむ気配がした。
――意外そうな視線。
そして、僅かなざわめき。
ほっと胸を撫で下ろした、その時。
……刺さる。
背中に、氷のような視線。
そっと横目で探ると、一人の令嬢が、感情を殺した微笑みのままこちらを見ていた。
口元は笑っているのに、瞳だけが冷たい。
――歓迎されていない。
直感が、そう告げる。
私は表情を崩さぬまま、静かに、その視線を受け流した。
教育係は一度全員を見渡し、淡々と告げた。
「では次に、立ち居振る舞いの確認に移ります。
二人一組になり、入室から挨拶、着席までの一連の動作を実演してください」
ざわり、と空気が動く。
組み合わせは、その場で指定された。
そして――
「ティアナ嬢。お相手は、ローゼ・タンザナイト嬢です」
……来た。
あの、冷たい視線の主。
タンザナイト公爵家の令嬢、ローゼ。
淡い銀髪を結い上げ、完璧な微笑みを浮かべたまま、こちらへ歩み寄ってくる。
「ご一緒できて光栄ですわ、ティアナ様」
声は柔らかい。
けれど、間合いが近い。
(……この人、わざとだ)
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
私は一歩、品よく距離を取る。
――数拍の沈黙。
「……よろしい」
眼鏡の奥から、教育係が私を見つめる。
「急な参加と聞いていましたが、姿勢、発声、礼の角度。いずれも申し分ありません」
その言葉に、周囲の令嬢たちが小さく息をのむ気配がした。
――意外そうな視線。
そして、僅かなざわめき。
ほっと胸を撫で下ろした、その時。
……刺さる。
背中に、氷のような視線。
そっと横目で探ると、一人の令嬢が、感情を殺した微笑みのままこちらを見ていた。
口元は笑っているのに、瞳だけが冷たい。
――歓迎されていない。
直感が、そう告げる。
私は表情を崩さぬまま、静かに、その視線を受け流した。
教育係は一度全員を見渡し、淡々と告げた。
「では次に、立ち居振る舞いの確認に移ります。
二人一組になり、入室から挨拶、着席までの一連の動作を実演してください」
ざわり、と空気が動く。
組み合わせは、その場で指定された。
そして――
「ティアナ嬢。お相手は、ローゼ・タンザナイト嬢です」
……来た。
あの、冷たい視線の主。
タンザナイト公爵家の令嬢、ローゼ。
淡い銀髪を結い上げ、完璧な微笑みを浮かべたまま、こちらへ歩み寄ってくる。
「ご一緒できて光栄ですわ、ティアナ様」
声は柔らかい。
けれど、間合いが近い。
(……この人、わざとだ)
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
私は一歩、品よく距離を取る。



