第4部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

翌日――
王妃教育が、始まった。

婚約者候補として集められたのは、
私を含めて8人。

公爵家、伯爵家の令嬢たちだ。

彼女たちは、
私が選ばれるよりずっと前から、
婚約者候補として教育を受けてきたらしい。

……正直、不安しかない。

「それでは、まずは礼儀作法から。
挨拶の練習を始めましょう」

そう告げたのは、
眼鏡をかけた、いかにも厳しそうな教育係だった。

その声を聞いた瞬間、
背筋が自然と伸びる。

――逃げ場は、もうない。


他の令嬢たちが、順番に挨拶をしていく。
どの令嬢も、さすが婚約者候補というべきだろう。
所作に一切の無駄がなく、長年の教育が身に染みついているのが分かる。

「それでは、ティアナ嬢の番ですよ」

そう告げられ、
私は一歩、前へ出た。

――大丈夫。
伯爵家で学んできたことを、思い出せ。

魅せ方は、知っている。

背筋を伸ばし、顎をわずかに引く。
視線はまっすぐ、堂々と。

「ラピスラズリ伯爵家、
ティアナ・ラピスラズリと申します。
よろしくお願いいたします」

淀みなく名乗り、
静かに、深く頭を下げる。

他所行きの笑顔を貼り付け、
柔らかく、しなやかに。
――品よく。