一通り打ち合いを終えると、兄はついに力尽き、その場に大の字になった。
芝の上に倒れ込む音が、妙に情けなく響く。
「情けないですね」
「う、うるさい……。
お前みたいな体力お化けと一緒にするな」
「失礼ですね。人を化け物みたいに」
「マルク様、どうぞ」
ナナがすっとタオルと水筒を差し出す。
その動きは優雅で、慣れている。
「悪いな」
マルクは胡座をかき、それを受け取った。
息は荒いが、どこか満足げでもある。
「ティアナ様!
本当に素敵でしたわ!」
ユリアが目を輝かせて駆け寄ってくる。
「まるで――戦場に咲く薔薇のようでしたわ!!」
「あはは……」
どう返せばいいのか分からず、苦笑いしか出てこない。
「ほんとだよね。
お嬢さま、可愛いし、きれい」
「気が合いますわね!!」
いつの間にか、ユリアとテオが完全に意気投合していた。
……なんだ、この空気。
「実際、お嬢様って体力ありますよね」
赤銅色の髪を揺らしながら、アレンが言う。
新人だった彼も、今ではすっかりこの場に馴染んでいた。
「そう?」
「俺たちと同じ訓練、普通についていけますし」
ロベルトが笑う。
アレンの指導役で、健康的な体格と兄貴分らしい雰囲気を持つ男だ。
「確かに……」
セナが懐かしむように言った。
「第一騎士団から
『どうせできないだろう』って無茶を言われたのに、
全部やってのけてさ。あの時は、相当驚かせてたな」
ロベルトも頷く。
「ああ。あの時の、あの人の顔。今でも覚えてるよ」
「開いた口が塞がらない、って感じでしたね」
セナも静かに頷いた。
「そんなこともあったね……」
思い返すと、胸の奥が少しだけ温かくなる。
あの頃は必死だったけれど、今となっては懐かしい思い出だ。



