「朝早くから、ずいぶんと熱心なのね」
わたしのすぐ横で声がして、びくんっと小さく肩が跳ねる。
いつ来たの? 全然気づかなかった。
のどが緊張でカラカラに乾いてしまって、声が出ない。
「その反応。ひょっとして、気づかなくてもいいことに、気づいてしまったのかしら?」
言葉とは裏腹に、なんとも思っていなさそうな小さな笑い声が、ふふっと聞こえる。
「最近、保健室に来る子たちから少しずつ分けてもらうだけじゃ全然足りなくなってきちゃったのよね。ほら見て? こんなにたくさんもらったばかりだっていうのに、もう口の横にしわができちゃった」
「どういう……意味ですか?」
おそるおそる問いかけながら声の方を見ると、楽しそうな笑みを浮かべた白壁先生が立っていた。
「一度、半妖の生気も試してみたかったのよね。とりあえず、少しわたしに分けてもらえる? ああ、それとも、ヒミツを知られたからには、一気に全部いただいちゃった方がいいのかしらね」
そう言いながら、白壁先生がわたしの方へと手を伸ばす。
逃げなくちゃって頭ではわかっているのに、恐怖で体がこわばってしまって、思うように動けない。
――と、そのとき。風のように駆けてきた白い影が、白壁先生におもいっきり体当たりし、先生の体がぐらりと傾いた。
その隙に、やっとの思いで白壁先生から距離を取る。
そんなわたしと白壁先生の間に立ちはだかり、低いうなり声をあげる白い影――。


