これでよしっと。
ゴミ捨て場に大きなゴミ袋を置き、手をぱんぱんっと払う。
そのとき――ザリッ。
背後で砂を踏みしめる音がして、どくんっと心臓が小さく跳ねる。
まったく気配に気づかなかった。
半分だけだけど妖狐のわたしは、聴覚も嗅覚も人間より断然いい。……はずなのに。
顔だけそーっとうしろに向けようとしたとき――。
「え、ちょ、なにこれ⁉ ぐっ……」
わたしの体を、ロープ状のなにかがぐいぐい締めつけてきた。
これって……ひょっとして、狐火⁉
「人間に正体を知られるとは、まったく愚かだな」
「く、黒瀬くん……なん、で、こんな……」
やっぱり。黒瀬くんも、妖狐だったんだ。
「元々ここは、俺たち黒狐の縄張りだった」
黒瀬くんの髪がぶわっと逆立つのと同時に、真っ黒い毛に覆われた三角の耳としっぽが顕現する。
「黒、狐……?」
わたしたち白狐とは違う妖狐の種族ってこと?
「そうだ。なのに、いつの間にか、あとから来たおまえら白狐が、勝手にこの土地を自分らのものにしやがった」
「でも、わたし……」
「それに人間もだ。俺たちの大事な里山を、自分たちのすみかのために、どんどん切り開きやがって。だから俺は、人間も他の妖狐も大キライだ。まずはおまえから始末してやる」
「おねが……やめ……」
胸のあたりまで締めつけられて、息ができない。



