恋は手のひらの上で

「あ、スクリーンとかそのままにしておいていいですよ。俺がやっておきます。下で他のみなさん、待ってると思います」

椎名さんだった。
顔よりも先に、手を見てしまって首を振る。

「ありがとうございます。たぶんみんな、一服してるはずです」

「あぁ、なるほど」

察したらしく、彼は苦笑しながら会議室のコードをまとめながら

「会議が長引くと、俺はカフェインがほしくなります」

と言う。

ちょっとした雑談とか、してくれるんだ。
気遣いかもしれないけれど、数多くあるであろう取引先のひとつにすぎない私と、空気を繋いでくれることがありがたい。

「椎名さんは、タバコは吸わないんですか?」

「はい」

即答した彼の手をついつい目で追ってしまう。

この人がタバコを吸っていたなら、きっとその手つきとかがだいぶ私の心を揺らしただろうな。
…と、場違いなことを考えてしまった。