手元の資料を慌てて探し、ようやく答えを見つける。
「JIS規格に準拠した微粒子模擬試験を実施しています。PM2.5相当粒子で、対照比約三十二%低減しています」
営業の佐竹さんもうなずく。よかった。間違っていない。
椎名さんは資料を見ながら続けた。
「in vitroですね。……in vivoの予定は?」
────逃げ道なし。
またしても資料をめくりながら、慌てるな、と自分に言い聞かせる。
「現在はラボ試験段階です。ただ、次フェーズで屋外環境下の実使用試験を計画しています」
椎名さんが静かにうなずいた。
「そのデータがあれば」
一度言葉を切る。
「御社が想定されている上代二千八百円でも、説得力が出ますね」
「本数値は、テスト前提の暫定価格です」
すると黒田さんが口を開いた。
「市場のアンチポリューション領域は伸びています。ただし競合は多い。差別化の鍵は?」
絶対に聞かれると思っていた質問だった。
私は一呼吸置く。ヒールに体重を乗せる。資料を握る手に力を入れ、向こうに座る三人を見据えた。
「都市生活者の“守り”に特化します。攻めの美白ではなく、生活防御型スキンケア。大気汚染、空調乾燥、花粉。外的ストレスに晒される日常を前提とした設計です」



