恋は手のひらの上で

室内が、わずかに静かになる。


…今、言えばいい。
“価格を見直します”と。


言葉が喉まで来て、止まる。

まだ、決めきれていない。

守りたいのか。
通したいのか。
勝ちたいのか。


自分の指先が、資料の角を強く押さえているのが分かる。

逃げているわけではない。
ただ、覚悟が足りない。


「……本日中に前提条件を再整理させてください」

口から出たのは、その言葉だった。

黒田さんがうなずく。

「了解です」


椎名さんと目が合った。

責める視線ではない。急かす視線でもない。
ただ、待っている。

その目に、胸が少しだけ熱くなる。