恋は手のひらの上で

いつも通りの、ざわつくフロア。
キーボードの音。
電話のコール。

そして、隣のデスクをちらりと見やる。


ものすごく真面目な顔をして、パソコンを見ている横顔。
ずっと見てきた横顔。
ずっと好きだった横顔。

一度も、俺に気持ちが傾くことはなかった、横顔。


…西野は、今日も綺麗だ。
ずっと、そうだった。


投げ出すように置いていたスマホが震える。

なんの通知かと手に取ると、同期の紗英からだった。

トーク画面を開いて、ぎょっとする。

『今夜、来い』
『来い』
『絶対、来い』

店のURL。
見たことのないバルだった。

すぐにもう一件メッセージ。

『大丈夫、芽依は呼んでない』


はっとして隣を見る。
彼女はまだパソコンを真剣な表情で見つめていた。


…なんだ、この鬼ライン。
行かないと、大騒ぎされそうな気がして。

まったく気は向かないけど、行くしかないらしい。

はぁ、とため息をついた。
スマホをポケットに突っ込んで、椅子から立ち上がる。


西野はまだ、気づかない。