恋は手のひらの上で

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会議室のテーブルにいつも通り資料を広げる。


椎名さんは手早くノートパソコンを開きながら言った。

「まず、発売スケジュールの確認からいきますか」

私は準備しておいたスライドをつける。
スクリーンに表示された資料には、発売までの工程が並んでいた。

「発売日は予定通り、前倒しのままで進めます」

「来月の二週目ですね」

「はい」

椎名さんは画面を指し示す。

「競合の二社は三週目に出る予定なので、ここで先に市場を取ります」

やっぱり、この人は俯瞰的に全部見ている。

私は手元のパソコンの画面を切り替えてキーボードを軽く弾いた。
そしてふと、疑問に思う。

「工場ラインは大丈夫なんですか?」

「はい。確保できています」

即答した椎名さんは落ち着いた声で答えた。

「初回ロットは三万本で調整しています」

思わず顔を上げてしまった。
言葉を失いかけて、慌てて首を振る。

「えっ、さ、三万…?」

「多いと思いました?」

「は、はい」

正直に答えると、椎名さんはちょっと面白そうに肩をすくめた。

「これくらいでちょうどいいです」

ほんの少しだけ笑う。

「俺も押しましたけど、上からもちゃんと承認おりてます」

─────この人は、いつもこうだ。
私の感情が置いてけぼりになるほど、先回る。