恋は手のひらの上で

高橋と二人で食事や飲みには行ったことがない。
だいぶマイペースで戸惑った。


「…なに」

私のじんわりした視線に気づいたのか、高橋が怪訝そうな顔をする。

「俺は、こういう人間だからさ。相手に合わせるとか、そういうのしないの」

「いいと思うよ、そういうとこ」

「西野はハマらなかったんだろ?」

「い、いや、それは」

言いかけたところで、早々とラーメンが運ばれてきた。


湯気の向こうで、高橋が箸を割る。

「まあ、いいんだけどさ」

「なにが?」

「俺さ」

少しだけ笑う。

「鈍くないから」

私は思わず顔を上げた。

高橋はレンゲをスープに沈めながら続ける。

「昨日の朝、西野の顔見て、だいたい分かった」

彼は箸で麺をしっかり挟む。

「…いや、嘘だな。もっと前から分かってた」

と箸を持つ手が、いっとき止まった。

私の方は、まだ箸を割ってもいない。手に持っているだけ。
出来たてのラーメンが、目の前にあるのに。

「食べろよ、伸びるぞ」