僕のHeartbeat〜落ちこぼれアンドロイドと天才〜

「あの花、可愛いね。名前はわからないけど綺麗だ」

シリルがそう口にすると、ラナが花を見て「ネモフィラって言うのよ」と答えた。その様子を見ていた通行人がヒソヒソと話す。

「あのアンドロイド、主人に答えを教えてもらってるよ」

「普通は主人にアンドロイドが教えるものだよね」

通行人が連れているアンドロイドも、シリルを蔑んだ目で見ている。シリルが俯きかけると、ラナの華奢な手がシリルの手を掴んだ。

「気にしなくていいわ。私はシリルに色んなことを教えるのが楽しいの!」

シリルは自身の胸元に触れた。あるはずのない心が痛い。ラナの優しさが、ただ重苦しく感じた。

(僕は、アンドロイドとして役に立てていないのに……)

ラナは天才だった。シリルが教えずとも成績は常にトップ。飛び級で大学を卒業し、十八歳である今は研究所の職員として働いている。シリルはラナの助手という立ち位置だ。

(でも僕は、その助手の役目すらまともに果たせてない)

もしも、あの時ラナに買われずにスクラップ工場に連れて行かれていたら。もしも、このまま不具合が起きて機能停止したら。