コートを預けると、要は再び絵美梨の手を取ってスタッフのあとに続く。
「まあ、以前とはテーブルの配置が違うのですね」
「はい。何度お越しいただいても新鮮な気持ちになっていただきたく、お客様に合わせた最適なおもてなしを考えております」
「そうなのね、すてき。前回はクリスマスツリーがあったところが、プレゼントボックスの飾りつけになっているのですね」
「ええ。もうすぐバレンタインデーですから」
絵美梨とスタッフの話を聞きながら、要も感心する。
「本当に素晴らしいところですね。私は既に満足感でいっぱいです」
要がそう言うと、絵美梨が笑い出す。
「緋山、ここはグランメゾンよ? お料理もいただかないで、なにを満足しているの?」
スタッフも、「せっかくですから、召し上がってください」と苦笑いした。
「はい、もちろん」
スタッフが引いた椅子に絵美梨が腰を下ろすと、要はようやく絵美梨の手を離し、自分も反対側の席に着いた。
「失礼いたします。本日はようこそお越しくださいました。食前酒はなにを召し上がりますか?」
ソムリエが尋ねると、絵美梨が「せっかくですが、今夜はノンアルコールで」と答えて、要は驚いた。
「お嬢様、お酒は召し上がらないのですか?」
「ええ。だって緋山も飲まないでしょう?」
「私に合わせていただく必要はございません。どうぞ召し上がってください」
「いいの。お任せでノンアルコールカクテルをお願いします」
絵美梨がそう言うと、ソムリエは「かしこまりました」とうやうやしく答えてから、要の様子をうかがう。
「では私はノンアルコールのシャンパンで」
「承知いたしました」
ソムリエが立ち去ると、要は改めて正面から絵美梨と向き合った。
「お嬢様、お肉料理の時はぜひワインを……」
そこまで言って、要は思わず言葉を止める。
テーブルの上で揺れるキャンドルの明かりを微笑みながら見つめていた絵美梨が、ん?と顔を上げた。
淡いピンクのワンピースに、胸元で輝くパールのネックレス。
下ろした髪がふわりと軽く揺れ、絵美梨を優しい雰囲気で彩る。
仕事の時とは明らかに違う今夜の絵美梨の姿に、要はドキドキし始めた。
「緋山、ワインを飲みたいの? それなら帰りは私が運転するわよ」
絵美梨の言葉に、ようやく要はハッと我に返る。
「とんでもない。ご冗談はおやめください」
「あら、本気で言ったのに。だってせっかく免許を取ったのに、なかなか運転させてもらえないんだもん。勘が鈍っちゃうわ」
「旦那様から、『運転しないと約束するなら免許を取っても良い』と言われたのではありませんか?」
「それ、ものすごく矛盾してるわよね。ほんと、お父様は頭が固いんだから」
「屋敷の敷地内なら、運転しても構わないですよ?」
「もう、遊園地のお子様ゴーカートと一緒にしないで!」
要はポカンとしてから、たまらず笑い出す。
「楽しそうでいいじゃないですか」
「じゃあ、今度勝負してよ? 絵美梨カートと要カートで」
「ははは! かしこまりした。激突されないようにがんばります」
そんなことを話しているうちに、ノンアルコールのカクテルとシャンパンが運ばれてきた。
「きれいな色のカクテルね」
「はい。お嬢様のイメージで作らせていただきました」
「あら、普段の私は可愛げのかけらもないのよ。ね? 緋山」
言われて要は首を振る。
「いいえ。お嬢様は誰よりも可愛らしく、それでいてかっこ良く、優しくて美しい方です」
絵美梨は一気に頬を赤らめた。
「と、とにかく乾杯しましょう」
「はい」
二人でグラスを手に取り、乾杯する。
「すてきな夜に、乾杯」
「乾杯」
ほのかに揺れるキャンドルの明かりの中、二人は見つめ合って微笑んだ。
「まあ、以前とはテーブルの配置が違うのですね」
「はい。何度お越しいただいても新鮮な気持ちになっていただきたく、お客様に合わせた最適なおもてなしを考えております」
「そうなのね、すてき。前回はクリスマスツリーがあったところが、プレゼントボックスの飾りつけになっているのですね」
「ええ。もうすぐバレンタインデーですから」
絵美梨とスタッフの話を聞きながら、要も感心する。
「本当に素晴らしいところですね。私は既に満足感でいっぱいです」
要がそう言うと、絵美梨が笑い出す。
「緋山、ここはグランメゾンよ? お料理もいただかないで、なにを満足しているの?」
スタッフも、「せっかくですから、召し上がってください」と苦笑いした。
「はい、もちろん」
スタッフが引いた椅子に絵美梨が腰を下ろすと、要はようやく絵美梨の手を離し、自分も反対側の席に着いた。
「失礼いたします。本日はようこそお越しくださいました。食前酒はなにを召し上がりますか?」
ソムリエが尋ねると、絵美梨が「せっかくですが、今夜はノンアルコールで」と答えて、要は驚いた。
「お嬢様、お酒は召し上がらないのですか?」
「ええ。だって緋山も飲まないでしょう?」
「私に合わせていただく必要はございません。どうぞ召し上がってください」
「いいの。お任せでノンアルコールカクテルをお願いします」
絵美梨がそう言うと、ソムリエは「かしこまりました」とうやうやしく答えてから、要の様子をうかがう。
「では私はノンアルコールのシャンパンで」
「承知いたしました」
ソムリエが立ち去ると、要は改めて正面から絵美梨と向き合った。
「お嬢様、お肉料理の時はぜひワインを……」
そこまで言って、要は思わず言葉を止める。
テーブルの上で揺れるキャンドルの明かりを微笑みながら見つめていた絵美梨が、ん?と顔を上げた。
淡いピンクのワンピースに、胸元で輝くパールのネックレス。
下ろした髪がふわりと軽く揺れ、絵美梨を優しい雰囲気で彩る。
仕事の時とは明らかに違う今夜の絵美梨の姿に、要はドキドキし始めた。
「緋山、ワインを飲みたいの? それなら帰りは私が運転するわよ」
絵美梨の言葉に、ようやく要はハッと我に返る。
「とんでもない。ご冗談はおやめください」
「あら、本気で言ったのに。だってせっかく免許を取ったのに、なかなか運転させてもらえないんだもん。勘が鈍っちゃうわ」
「旦那様から、『運転しないと約束するなら免許を取っても良い』と言われたのではありませんか?」
「それ、ものすごく矛盾してるわよね。ほんと、お父様は頭が固いんだから」
「屋敷の敷地内なら、運転しても構わないですよ?」
「もう、遊園地のお子様ゴーカートと一緒にしないで!」
要はポカンとしてから、たまらず笑い出す。
「楽しそうでいいじゃないですか」
「じゃあ、今度勝負してよ? 絵美梨カートと要カートで」
「ははは! かしこまりした。激突されないようにがんばります」
そんなことを話しているうちに、ノンアルコールのカクテルとシャンパンが運ばれてきた。
「きれいな色のカクテルね」
「はい。お嬢様のイメージで作らせていただきました」
「あら、普段の私は可愛げのかけらもないのよ。ね? 緋山」
言われて要は首を振る。
「いいえ。お嬢様は誰よりも可愛らしく、それでいてかっこ良く、優しくて美しい方です」
絵美梨は一気に頬を赤らめた。
「と、とにかく乾杯しましょう」
「はい」
二人でグラスを手に取り、乾杯する。
「すてきな夜に、乾杯」
「乾杯」
ほのかに揺れるキャンドルの明かりの中、二人は見つめ合って微笑んだ。



