ただそこに愛があるなら

朝になり、絵美梨の体温を確かめた要は、ホッと胸をなで下ろす。

(36度5分、良かった。もう大丈夫だな)

ひと晩中ベッドのそばにいてガチガチになった身体を、シャワーで温めてから、絵美梨が食べられそうなものをルームサービスで頼んだ。

「おはよう、緋山」

カチャッとドアが開いてリビングに姿を現した絵美梨に、要は驚く。

「お嬢様、お身体の具合は?」
「ん? なにが? 久しぶりによく眠れたわ。あ、美味しそう! 食べてもいい?」

テーブルの上のフルーツやヨーグルト、スクランブルエッグとスープに、絵美梨は目を輝かせる。

要はポカンとして、早速食べ始めた絵美梨を見つめた。

(もしや、なにも覚えていないとか?)

きっとそうなのだろう。
夢の中の出来事としか、いや、もしかしたら全て忘れているのかもしれない。

熱が出たことも、二人で交わした言葉も。

要は身体中の力が抜ける気がした。

「あー、美味しかった。緋山も早く食べちゃって。シャワーを浴びて着替えたら、すぐに名古屋に向かうわよ」
「は……い」
「ん? 緋山、寝ぼけてる?」
「いえ、大丈夫です」
「そう? じゃあ、あとでね」

絵美梨が再び寝室へと戻ると、残された要は、しばし呆然としていた。