ただそこに愛があるなら

「社長、お疲れ様です」

新郎新婦が打ち合わせを終えて帰ると、サロンのバックオフィスに戻ってきた絵美梨に要はコーヒーを淹れる。

「ありがとう」

絵美梨はコーヒーを飲みながら、早速他のスタッフを集めてミーティングを始めた。

「先程のお二人のパーティーは2か月後の6月27日。時間は18時から21時で、会場はうちと提携しているレストランよ。当日のヘアメイクは乃亜(のあ)ちゃん、お願いね」

23歳のまだ若い美容師の乃亜が「はい!」と返事をする。

「あと、花かんむりやブーケとブートニアについてもご希望をうかがったから、次の打ち合わせまでに香織(かおり)ちゃん、イメージ画像を作っておいてくれる?」
「分かりました。次回の打ち合わせには私も同席しますね」

27歳の香織はセンスのあるフローリストで、お客様からの評判もいい。

「ありがとう。試作を作ったら、ホームページやSNSにもアップしてね。香織ちゃんのお花を目当てに、贈呈用の花束のご注文も増えてるから」
「ほんとですか? はい! がんばります」

笑顔の絶えない女性陣のミーティングを眺めながら、要は一人考える。

(お嬢様が隠し撮りされていたことは、黙っておいた方がいいな。その分、俺がこれからも注意しておかなくては)

絵美梨を怖がらせず、明るい職場の雰囲気を守ることが自分の使命だと、要は改めて気を引きしめていた。