ただそこに愛があるなら

「あの、すみません。緋山要はどうなりましたか?」

病院に着くと昨日と同じICUのフロアに行き、ナースステーションで声をかけた。

「緋山さんですね。容体は落ち着いていますよ。これから先生の診察を受けて、許可が下りれば一般病棟に移動します」

絵美梨は、ホッと胸をなで下ろす。

「そうなのですね。では、廊下のベンチで待たせていただいてもよろしいですか?」
「それは構わないけど、いつになるか分からないわよ?」
「大丈夫です。ありがとうございます」

歩き出すと、バッグの中のスマートフォンがバイブで震える。
要の母からの電話だった。
絵美梨は建物の外に出てから応答する。

「もしもし、おば様?」
『おはようございます、お嬢様。お仕事中にすみません』
「いいえ、今要くんの病院にいます」
『まあ、そうなのですね。先程病院から連絡があったので、お嬢様にもお知らせしようかと思ったのですが……』

どうやら絵美梨が受けた説明と同じ内容を、電話で話されたらしい。

『一般病棟に移ったあと、面会時間に病院に行くつもりです』
「そうなのね。私、なにも考えずに来てしまってごめんなさい」
『とんでもない。お嬢様、本当にありがとうございます』
「おば様、私はこのままここにいるので、病棟を移動することになれば、また連絡いたします」
『まあ、ありがとうございます。お嬢様、くれぐれも無理なさらないでくださいね』
「私は大丈夫です。ではまた、後ほど」

電話を切ると、絵美梨は廊下のベンチに戻る。
祈るように、ただひたすら静かに待ち続けた。