ただそこに愛があるなら

「白ドレスは、シンプルなラインのものをサイズ展開してありまして、オプションでお好みのデザインに仕上げていただけます。例えばこちらですが……」

翌日。
絵美梨は要の車でサロンに出勤していた。

Salon de EXCELSIA(サロン・ド・エクセルシア)と名付けられた広々としたサロンは、全面ガラス張りで明るく、シャンデリアや高級ソファなどが置かれラグジュアリーな雰囲気だ。

レストランウェディングでの衣装を探しに来たカップルに、絵美梨はカタログを見せながらにこやかに説明する。

「プリンセスラインのビスチェドレスに、様々なオプションをご用意しました。パフスリーブのショートボレロや、肩に着けるシルクのバラの飾り、背中に着ける大きなリボンなども。長いトレーンで後ろ姿をゴージャスにしたり、上半身を黒のホルターネックで重ね着して、スカートとバイカラーのシックな印象にも出来ます。スカート部分はオーガンジーをふわっと重ねて2重にしたりと、それぞれ違った印象になりますので、お好きなテイストでコーディネートしていただけますよ」
「わあ、なんだかわくわくします。このピンクのチュールのかぶせスカート、すてき!」
「ええ。こちらはお花やパールを散らしていて、とてもキュートです。お揃いのショールもありますので、白ドレスからカラードレスにお色直ししたように、ガラリとイメージを変えられます」
「それ、いいです! レストランでのこぢんまりしたパーティーだから、お色直しはやめようと思ってたけど、これなら着替えずにあっという間にドレスチェンジ出来そう。ね?」

そう言って新婦が嬉しそうに、隣に座る新郎に笑いかけた。

「そうだな。ドレス一着分の値段にオプションを加えるだけでいいから、予算的にも大丈夫だし」
「うん!」

新婦は目を輝かせて絵美梨に頷く。

「これでお願いします」
「かしこまりました。簡単なヘアチェンジも可能ですよ」

絵美梨がヘアメイクのサンプルカタログを広げると、新婦は熱心に覗き込んだ。

「この花かんむり、可愛いなあ。やってみたい」

興奮気味の新婦に絵美梨は「お花のリクエストも承れます。お好きなお花や、色のイメージなどはありますか?」と丁寧にヒアリングを始めた。

その様子を、サロンの奥のデスクから要はそっと見守る。

パーテーションはあるが、一番端の要の席からはサロン全体が見渡せ、パソコン作業をしながらさり気なく要は絵美梨の様子をうかがっていた。

やがて絵美梨は立ち上がり、ドレスのショーケースに新婦を案内する。

うっとりとドレスに魅入る新婦を、新郎がスマートフォンで撮影し始めた。

だが要は違和感を感じて席を立つ。
離れた場所から新郎のスマートフォンの画面を見てみると、絵美梨がアップで映っていた。

要はすぐさま新郎に歩み寄る。

「お客様。お連れ様がご試着される間、こちらのソファでお待ちください。今、コーヒーをお持ちしますので」

新郎は一瞬ビクッとしてから、スマートフォンを持つ手を下ろした。

「あ、は、はい」
「どうぞこちらへ」

要はスッと手を差し伸べて、要のデスクからほど近いソファへと新郎を案内した。