まずは駅前のショッピングモールに入り、4人は当てもなく色々なお店を見て回る。
「この服可愛い!」
「あ、お揃いのアクセサリー買っちゃう?」
「大きなツリー! みんなで写真撮ろうよ」
女の子は、なにをやってもなにを見ても、とにかく楽しそうだ。
要は終始微笑ましくその様子を見守っていた。
ランチタイムになると、4人はソファ席が並ぶカフェに入る。
さすがに男一人では浮いてしまうかと要は躊躇したが、たまたまカウンター席が1つ空いて、そこならと店内に入った。
ちょうど4人がすぐ後ろのソファに案内され、背中越しに会話が聞こえてくる。
距離は近いが、間に観葉植物が置かれていて、要の姿を隠してくれていた。
「どれも美味しそうだね。なににしようかな」
「私、このトロトロ卵のオムライスにしまーす!」
「あー、乃亜ちゃんっぽいね」
「ええ? 私っぽいってなんですか?」
「ほら、布団かぶってスヤスヤ寝てそうでしょ?」
「卵の布団なんて、かぶってませんよ」
他愛もない話だが、とにかく楽しそうだ。
香織はカルボナーラ、京華はミートドリア、そして絵美梨はサラダサンドをオーダーする。
要は一人、ビーフシチューを選んだ。
料理が運ばれてくると、それだけで4人は「わーい!」と盛り上がり、「美味しい!」と感激しながら味わっている。
(お嬢様が女子会を楽しみにされた訳だ)
頭ごなしに「お一人では行かせません」と言ってしまったことを、要は今更ながら後悔した。
(この時間はお嬢様にとって、大切な時間。これからも女子会は、邪魔をせずに遠くから見守ろう)
そう思いつつ、要もビーフシチューを美味しく食べ終えた。
食後の紅茶を飲みながら、4人はおしゃべりに花を咲かせる。
もうすぐクリスマスとあって、自然と恋人の話題になった。
「クリスマスイブはみんなデートでしょう? 残業は禁止ね」
「絵美梨さんもですよ。一人で居残りしないでくださいね」
「私はいいのよ。恋人いないから」
すると乃亜たちが「ほんとに?」と詰め寄る。
「私、今まで誰ともおつき合いしたことないの。ずっと女子校だったから、男性と知り合う機会もなくて」
「そうなんですか? 告白されたりは?」
「うーん、どうだったかな? あ、結婚は迫られたけど」
ええー?と他の3人は仰け反って驚いた。
「もう結婚の話かぁ。お嬢様の世界って感じですね。それで? そのお話、断ったんですか?」
「ええ、もちろん」
「大丈夫なんですか? お家同士の関係に亀裂が入ったり、仕事に影響出たりしませんか?」
「その程度で影響が出るような仕事、自力で埋め合わせてみせるわ」
絵美梨がそう言うと「かっこいいー!」と乃亜が声を上げた。
「なんて男前なの、うちの社長。惚れ惚れしちゃった。私、絵美梨さんにどこまでもついて行きます!」
「あら、ありがとう。恋人より、乃亜ちゃんやみんながいてくれることの方が嬉しいの」
「でも絵美梨さんには、すてきな恋愛してほしいなぁ。確かに高嶺の花で、気軽に声かけたりは出来ないですけど。それにいつもそばには緋山さんがいて、恋人同士みたいだから、つけ入る隙もない感じだし」
今度は絵美梨が、ええ?と驚く。
話が聞こえてきた要も、内心ソワソワし始めた。
「私と緋山が? そんなふうに思われてたの?」
「もちろん。お二人はそんな雰囲気になったこと、ないんですか?」
「ないない。だって緋山は、物心ついた時から、当たり前みたいにそばにいたんだもの。最初はお兄ちゃんみたいで、だんだん担任の先生みたいになって、今では……そうだな、実の父より口うるさいお父さんみたい」
「やだー! そんなこと聞いたら、緋山さんショック受けちゃいますよ。あんなにイケメンでかっこいいのに、お父さんなんて」
「えっ、緋山ってイケメンでかっこいいの?」
「もう、絵美梨さんたら。そのセリフも緋山さんにはショッキングですって」
あはは!と笑い声が上がるが、要は笑えない。
少なからずショックを受けてうなだれた。
(確かに俺は、お嬢様と恋人になんてなる訳がない。そこはいい。だが、担任の先生どころか、口うるさいお父さんと思われていたなんて……。旦那様と同じ50代ということか?)
もしかして、今こうして一人でカフェにいる状況も、周りから見たら不審者に見えるかもなしれない。
そう思い、そろそろ出ようとした時だった。
すれ違ったスタッフが絵美梨たちのテーブルに行き、「お誕生日おめでとうございます!」と言って小さなホールケーキを置いた。
「えっ、なに、私?」
絵美梨は突然のことに驚きを隠せない。
「少し早いけど、私たちからお祝いしたくて。ハッピーバースデー!」
乃亜が絵美梨に、リボンのついた紙袋を差し出した。
「え、ありがとう。ごめんなさい、びっくりしてなにも言葉が……」
「そんなに? ささやかですけど、3人で選んだプレゼントです。コスメとかアロマとか、バスボールとか。絵美梨さんはリッチなものをお使いだろうと思ったんですが、庶民の視点で選ぶコスパ最強、口コミ100点満点の品々を、どうぞお納めくださいな」
茶目っ気たっぷりに笑う乃亜から、絵美梨はそっとプレゼントを受け取る。
「ありがとう、みんな。嬉しい! 女子力ないから、そういうのに疎くて。楽しみに使わせてもらうわね」
「はい! すてきなお誕生日をお過ごしくださいね」
要がそっと視線を動かして見ると、絵美梨は満面の笑みで頷いている。
(お嬢様の誕生日か、来週だな)
絵美梨の誕生日は12月26日。
毎年、浜子が腕によりをかけてごちそうを作り、皆でお祝いするのが恒例だった。
(旦那様は、そろそろ恋人と二人で過ごす誕生日にしてほしいものだと毎年こぼしていらっしゃるが、今年もそうなるのか?)
関野とのお見合い、そして戸川との交際も断った今、やはりいつものように屋敷で誕生日の夜を過ごすことになるだろう。
(プレゼントを考えておかなくては)
そう思いながら、もう一度絵美梨の笑顔に目を向けてから、要は店を出た。
「この服可愛い!」
「あ、お揃いのアクセサリー買っちゃう?」
「大きなツリー! みんなで写真撮ろうよ」
女の子は、なにをやってもなにを見ても、とにかく楽しそうだ。
要は終始微笑ましくその様子を見守っていた。
ランチタイムになると、4人はソファ席が並ぶカフェに入る。
さすがに男一人では浮いてしまうかと要は躊躇したが、たまたまカウンター席が1つ空いて、そこならと店内に入った。
ちょうど4人がすぐ後ろのソファに案内され、背中越しに会話が聞こえてくる。
距離は近いが、間に観葉植物が置かれていて、要の姿を隠してくれていた。
「どれも美味しそうだね。なににしようかな」
「私、このトロトロ卵のオムライスにしまーす!」
「あー、乃亜ちゃんっぽいね」
「ええ? 私っぽいってなんですか?」
「ほら、布団かぶってスヤスヤ寝てそうでしょ?」
「卵の布団なんて、かぶってませんよ」
他愛もない話だが、とにかく楽しそうだ。
香織はカルボナーラ、京華はミートドリア、そして絵美梨はサラダサンドをオーダーする。
要は一人、ビーフシチューを選んだ。
料理が運ばれてくると、それだけで4人は「わーい!」と盛り上がり、「美味しい!」と感激しながら味わっている。
(お嬢様が女子会を楽しみにされた訳だ)
頭ごなしに「お一人では行かせません」と言ってしまったことを、要は今更ながら後悔した。
(この時間はお嬢様にとって、大切な時間。これからも女子会は、邪魔をせずに遠くから見守ろう)
そう思いつつ、要もビーフシチューを美味しく食べ終えた。
食後の紅茶を飲みながら、4人はおしゃべりに花を咲かせる。
もうすぐクリスマスとあって、自然と恋人の話題になった。
「クリスマスイブはみんなデートでしょう? 残業は禁止ね」
「絵美梨さんもですよ。一人で居残りしないでくださいね」
「私はいいのよ。恋人いないから」
すると乃亜たちが「ほんとに?」と詰め寄る。
「私、今まで誰ともおつき合いしたことないの。ずっと女子校だったから、男性と知り合う機会もなくて」
「そうなんですか? 告白されたりは?」
「うーん、どうだったかな? あ、結婚は迫られたけど」
ええー?と他の3人は仰け反って驚いた。
「もう結婚の話かぁ。お嬢様の世界って感じですね。それで? そのお話、断ったんですか?」
「ええ、もちろん」
「大丈夫なんですか? お家同士の関係に亀裂が入ったり、仕事に影響出たりしませんか?」
「その程度で影響が出るような仕事、自力で埋め合わせてみせるわ」
絵美梨がそう言うと「かっこいいー!」と乃亜が声を上げた。
「なんて男前なの、うちの社長。惚れ惚れしちゃった。私、絵美梨さんにどこまでもついて行きます!」
「あら、ありがとう。恋人より、乃亜ちゃんやみんながいてくれることの方が嬉しいの」
「でも絵美梨さんには、すてきな恋愛してほしいなぁ。確かに高嶺の花で、気軽に声かけたりは出来ないですけど。それにいつもそばには緋山さんがいて、恋人同士みたいだから、つけ入る隙もない感じだし」
今度は絵美梨が、ええ?と驚く。
話が聞こえてきた要も、内心ソワソワし始めた。
「私と緋山が? そんなふうに思われてたの?」
「もちろん。お二人はそんな雰囲気になったこと、ないんですか?」
「ないない。だって緋山は、物心ついた時から、当たり前みたいにそばにいたんだもの。最初はお兄ちゃんみたいで、だんだん担任の先生みたいになって、今では……そうだな、実の父より口うるさいお父さんみたい」
「やだー! そんなこと聞いたら、緋山さんショック受けちゃいますよ。あんなにイケメンでかっこいいのに、お父さんなんて」
「えっ、緋山ってイケメンでかっこいいの?」
「もう、絵美梨さんたら。そのセリフも緋山さんにはショッキングですって」
あはは!と笑い声が上がるが、要は笑えない。
少なからずショックを受けてうなだれた。
(確かに俺は、お嬢様と恋人になんてなる訳がない。そこはいい。だが、担任の先生どころか、口うるさいお父さんと思われていたなんて……。旦那様と同じ50代ということか?)
もしかして、今こうして一人でカフェにいる状況も、周りから見たら不審者に見えるかもなしれない。
そう思い、そろそろ出ようとした時だった。
すれ違ったスタッフが絵美梨たちのテーブルに行き、「お誕生日おめでとうございます!」と言って小さなホールケーキを置いた。
「えっ、なに、私?」
絵美梨は突然のことに驚きを隠せない。
「少し早いけど、私たちからお祝いしたくて。ハッピーバースデー!」
乃亜が絵美梨に、リボンのついた紙袋を差し出した。
「え、ありがとう。ごめんなさい、びっくりしてなにも言葉が……」
「そんなに? ささやかですけど、3人で選んだプレゼントです。コスメとかアロマとか、バスボールとか。絵美梨さんはリッチなものをお使いだろうと思ったんですが、庶民の視点で選ぶコスパ最強、口コミ100点満点の品々を、どうぞお納めくださいな」
茶目っ気たっぷりに笑う乃亜から、絵美梨はそっとプレゼントを受け取る。
「ありがとう、みんな。嬉しい! 女子力ないから、そういうのに疎くて。楽しみに使わせてもらうわね」
「はい! すてきなお誕生日をお過ごしくださいね」
要がそっと視線を動かして見ると、絵美梨は満面の笑みで頷いている。
(お嬢様の誕生日か、来週だな)
絵美梨の誕生日は12月26日。
毎年、浜子が腕によりをかけてごちそうを作り、皆でお祝いするのが恒例だった。
(旦那様は、そろそろ恋人と二人で過ごす誕生日にしてほしいものだと毎年こぼしていらっしゃるが、今年もそうなるのか?)
関野とのお見合い、そして戸川との交際も断った今、やはりいつものように屋敷で誕生日の夜を過ごすことになるだろう。
(プレゼントを考えておかなくては)
そう思いながら、もう一度絵美梨の笑顔に目を向けてから、要は店を出た。



