ただそこに愛があるなら

「なんとおっしゃられても、だめなものはだめです」
「なによ、緋山のケチ!」

クリスマスが翌週に迫ったある日。
絵美梨は屋敷のリビングで要と言い争っていた。

絵美梨の主張は
「サロンの定休日に、香織や京華や乃亜と一緒にランチに行くが、緋山はついて来ないでほしい」
そして要の答えは、ノーだった。

「だって、女子会なのよ? 緋山がいたら、話が弾まないじゃない」
「離れたところにおりますので、私のことはお気になさらず」
「気になっちゃうの! それにみんなと一緒だから、危なくないし」
「でしたら、皆様との待ち合わせ場所までご一緒します」
「子ども扱いしないでってば!」

堂々巡りだったが、やがて絵美梨がポツリと呟く。

「本音を言うと、私、普通の感覚を大事にしたくて。知らず知らずのうちに、周りと違っていくのが怖いの」

要は、急にしょんぽりする絵美梨が心配になり、黙って耳を傾けた。

「この間、立て続けに関野さんや戸川さんとお会いしたでしょう? その時に痛感したの。普通の感覚を失くすって、とても怖いことだって。自分の行いがどんなふうに見られているか、分からなくなってしまうのよ。誰も教えてくれないし、自分で違和感にも気づけない。裸の王様そのものよ。私はそうはなりたくないの、絶対に。だからお願い、1日だけでいいから、普通の生活をさせて」

真剣に訴えてくる絵美梨を、要はじっと見つめる。
その意志が固いのを感じると、渋々頷いた。

「分かりました。では必ず、夕方明るいうちにお戻りください」
「分かったわ、約束する。ありがとう、緋山」

にこっと嬉しそうに笑いかけられ、要は思わず見とれてしまう。

結局それ以上はなにも言えなかった。