ただそこに愛があるなら

名門の女子大に通い始めると、絵美梨は松島グループの会社でインターンとして働き始める。

卒業後にそのまま社員となり、23歳になると、いきなり父の幸一郎に「子会社を立ち上げる」と宣言した。

エステやネイル、ヘアメイクやドレスアップを一括して行うトータルサロンを経営するというのだ。

幸一郎は驚いて「まだ23歳のお前になにが出来る?」と反対したが、絵美梨はコツコツと書き溜めていた企画書を渡して幸一郎を説得し、「3年で黒字に出来なければ潰す」という条件のもと、子会社を設立させた。

そこからの絵美梨の手腕は見事だった。

絵美梨自身が広告塔となり、インフルエンサーとしてSNSでサロンをアピール。

若者向けだけでなく、松島グループの令嬢として築いてきた人脈を活かし、企業の社長夫人や財界人など、パーティーの常連客向けにハイクラスのサービスも展開した。

そうして絵美梨は、3年という期限を待たず、
サロン開業からわずか1年で黒字化を達成してみせたのだった。

(仕事が順調なのはいいが、やはり忙しすぎるな。このままではお嬢様が身体を壊してしまう。そろそろ手を緩めてもいい頃なのに)

要は絵美梨のビジネスの才覚に脱帽しつつ、本気でどうにか負担を減らさなければと考えを巡らせる。

(今夜のパーティーの戸川社長とも、お嬢様はビジネスとしては手を組みたいと思っているようだったし)

戸川社長本人は、はっきり言って絵美梨の好みではない。
だが仕事のパートナーとしてならば、良い相手だと思っている。

要は長年の経験から、絵美梨の考えが手に取るように分かっていた。

(戸川社長から連絡がくれば、お嬢様はまたお会いになるだろう)

そう考えるとなぜだかムッとする。

(馴れ馴れしく触れさせないように、そばでお守りしなければ。そしてこれ以上お嬢様が忙しくならないよう、なにか対策を考えなければ)

要は一人、夜更けまで考え込んでいた。