ただそこに愛があるなら

ティーラウンジの席に着くと、絵美梨はようやくホッとする。

すると関野は大げさに身体をひねって手を挙げ、人差し指と中指をクイクイと手前に動かしてスタッフを呼んだ。

(ええー!? なにそれ)

近づいてきたスタッフがうやうやしく頭を下げると、「ホット1つ」と顔も見ずにオーダーし、おもむろに足を組む。

「かしこまりました。絵美梨お嬢様はいかがなさいますか?」

顔見知りの年配の男性スタッフに聞かれて、絵美梨は関野の振る舞いが申し訳なくなった。

「わたくしはロイヤルミルクティーをお願いします」
「ロイヤルミルクティーですね。ご一緒にシフォンケーキはいかがでしょう?」
「では少しだけいただけますか? 昼食を済ませたばかりだけど、ケーキも美味しそうだから」

スタッフはにこやかに笑ってから「少々お待ちくださいませ」とお辞儀をして去る。

背もたれに深くもたれて、足を組んだままの関野に、絵美梨は視線を上げられなかった。

(やめてもらえないかしら。恥ずかしいったらないわ)

だがどうやら関野は、そんな自分がかっこいいと酔いしれているようだ。

(気づかないの? 横柄な態度に)

うつむいたままの絵美梨に、またしても関野は見当違いなことを言う。

「絵美梨さんは本当におしとやかですね。夫の後ろを3歩下がってついて行くような、まさに大和撫子だ」

絵美梨は思わず顔をしかめた。

(この人は、私のなにを見ているのだろう)

形だけ手を差し伸べ、支えているつもりが逆に歩きにくくしているのに気づきもせず、自分の振る舞いがかっこいいと勘違いしている。

絵美梨はそっと視線を上げて、関野を観察した。

肘掛けに右肘を載せて頬杖をつき、口元に笑みを浮かべてラウンジを見渡しているその様子に、絵美梨は違和感しか湧いてこない。

(きっと環境がそうさせてしまったのかも。御曹司で、上流階級の集まりに慣れていくうちに、普通の感覚を失くしてしまったのだわ)

どこがどうとかではなく、関野の全てがなにか違うとしか思えない。

やがてスタッフが飲み物とケーキを運んできた。