ただそこに愛があるなら

1時間半ほど経った頃、ロビーの奥の通路から3人が姿を現した。

要も立ち上がるが、3人はフロントの近くで立ち止まり、関野と澤井夫人がなにやら話し出す。

やがて関野と絵美梨がお辞儀をして、歩き出した澤井夫人を見送った。

「あら、緋山さん。お帰りではなかったの?」

近づいてきた夫人が、要を見て驚く。

「はい。お嬢様を無事にお屋敷まで送り届けるのが、私の役目ですから」
「そう。関野さん、ずいぶん絵美梨さんがお気に入りのようよ。これから二人でお庭を散歩したいって。その後ティーラウンジでゆっくりお話ししたいそうだから、まだしばらくかかると思うわ」
「かしこまりました。奥様、お見送りいたします」
「ありがとう。運転手に連絡したから、ロータリーに車を回してくれてるはずなの」

要が半歩先を歩き、夫人をエントランスに促す。
外に出ると、ちょうど黒塗りのセダンがロータリーに到着したところだった。

「お見送りありがとう、緋山さん」
「いいえ。どうぞお気をつけて」

ドアをそっと閉めてから、要は動き出した車に頭を下げた。