ただそこに愛があるなら

その数日後。
パーティーの支度をする為にサロンにやって来た澤井夫人に、絵美梨は見合い話を持ちかけられた。

「お見合い、ですか?」
「そう。でもそんなに堅苦しいものでななくて、わたくしの友人の息子さんを紹介したいのよ。関野(せきの)商事の御曹司で年齢は35歳。実はバツイチなんだけど、悪い人ではないのよ。会うだけでも会ってみてくれない?」
「関野商事ということは、きっと父とも仕事の繋がりがありますよね?」
「そうね。絵美梨さんのお家柄には遠く及ばないけれど、関野商事も一流企業ですから。でもその息子さんはずっと海外転勤を繰り返していて、最近ようやく日本に戻ってきたところなの。絵美梨さんのお父様とも面識はないと思うわ。5年前に政略結婚したんだけど、お相手の女性は日本を離れたくないからと別居生活を送っていて、まあそれが原因で残念ながら離婚したみたい」
「そうですか」

すると澤井夫人は、声を潜めて絵美梨に顔を寄せる。

「やっぱりバツイチが気になる?」
「いえ、そんなことはありません。ただわたくし自身、結婚についてはなにも考えられなくて」
「すぐ結婚に結びつけなくてもいいのよ。気軽にお仕事のお話や雑談をするのでもいいし。ね? 一度でも会ってくれると、わたくしも助かるわ。なにせ、とにかく息子を絵美梨さんに会わせたいって、友人に何度も頼まれてるの。そのあとお断りしてもらっても構わないから」

ここまで言われては無下にも出来ない。

「かしこまりました。仕事が落ち着いたらお食事だけでも。父にも相談してみますね」
「分かったわ。ありがとう、絵美梨さん」

ひとまず、そう話を終えた。