ただそこに愛があるなら

由美の結婚が決まり、戸川がSNSで報告したところ、コメント欄は一気に祝福ムードで盛り上がった。

【おめでとうございます! 最初からずっと追いかけて見てました】
【どんどんきれいになっていく由美さんに、こっちまで嬉しくなりました。どうぞお幸せに】
【なんだかシンデレラのようですね】
【私もこんなふうに磨かれたいなー】
【さすがは松島絵美梨のサロン。奮発して通っちゃおうかな】
【私もそう思ったけど、予約が全然取れない!】
【みんな考えることは一緒なのね】

ひっきりなしにサロンにかかってくる電話や、メールでの問い合わせの対応を、要が一人で引き受ける。

そうしなければならないほど、スタッフ全員が業務に追われていた。

大変なはずなのに、誰もが皆、由美の結婚式を楽しみに、熱心に打ち合わせを重ねる。

由美が初めてお相手の男性をサロンに連れてきた時には、まるで親戚のように感激の面持ちで迎えた。

「初めまして、黒田(くろだ)と申します。由美がいつもお世話になっています」
「ひゃー! あのあの、ちょっともう」

興奮して言葉にならない乃亜に、由美が笑って黒田に言う。

「彼女が乃亜ちゃんなの。私の恋愛の師匠」
「ああ、あなたが。 由美から聞きました。あなたとお話しするのが毎回楽しみだったそうで」

眼鏡の奥の目を細めて笑いかける誠実そうな黒田に、乃亜は「ここ、こちらこそ」と頭を下げた。

「結婚式まで、二人でお世話になります。よろしくお願いします」
「かしこまりましてございます」

乃亜ちゃん……、と香織が苦笑いする。

「すみません、黒田さん。いつもはもう少しちゃんとしてるんですけど、今日はどうにも……」
「香織さん! もう少しじゃなくて、私はもっとちゃんとしてます!」
「はいはい。それなら、ほら。早速ブライダルメイクの打ち合わせをしっかりね」
「はい! 当日は由美さんをとびっきり美しい花嫁にしてみせます」

拳を握ってみせる乃亜に、由美も「ありがとう、乃亜ちゃん。よろしくね」と笑顔を浮かべた。