ただそこに愛があるなら

「絵美梨さん、私は回りくどい言い方が嫌いでね。単刀直入にお話しします。うちのお客様を、絵美梨さんのサロンで美しく磨き上げてください。その様子を密着取材させてほしいんだ」
「密着取材、ですか?」
「そう。うちのマッチングアプリに登録している女性を、絵美梨さんのサロンで美しく変身させてプロフィール写真を撮る。そしてその女性に交際を申し込む男性が現れたら、初めてのデートのトータルコーディネートをお願いしたい。デートの様子も撮影して、お二人のコメントももらうんだ。やらせや台本一切なしの、カップルのありのままを動画にして配信する。ぜひご協力いただきたい」

力強く訴える戸川に、絵美梨は少し考える素振りを見せた。

「密着取材ということは、うちのサロンでの様子も撮影するということですよね?」
「ええ、そうです。絵美梨さんのサロンにとっても、良い宣伝になるように仕上げますよ。もちろん広告料などは請求しません。絵美梨さん、私はね、女性は誰しも磨けば光ると思っています。美しくなれば自信がついて、表情も明るくなる。そうすれば、男性の目にも魅力的に映ります。あなたのサロンなら、女性はその自信をつけてもらえる、そう感じています」

戸川が真っ直ぐ見つめると、絵美梨は一度視線を落としてから顔を上げた。

「わたくしの一存で、今お返事を差し上げることは出来かねます。スタッフとも相談したいので、少々お時間をいただけますか?」
「もちろんです。ですが、あなたはきっと引き受けてくださるでしょう。そしてこの先ずっと我々はタッグを組んで、多くの女性を幸せにしていきたい。晴れてカップル成立となり、結婚の運びとなれば、挙式のウェディングドレスもあなたのサロンにお任せしたいと思っています。見届けたくないですか? 女性が1歩1歩幸せの階段を登る姿を」

要はちらりと横目で絵美梨の様子をうかがった。

敢えてクールな表情を装っているが、伏し目がちの瞳はキラキラと輝き、口元には優しい笑みを浮かべている。

(決まりだな)

心の中でそう思う。
と同時に、これから長いつき合いになるだろう戸川のことを、なぜだか警戒しなければと要は思い始めていた。