ただそこに愛があるなら

2日後、要は約束の時間より早く屋敷に着き、絵美梨が出てくるのを待つ。

11時半ちょうどに、浜子が開けた玄関の扉からスーツ姿の絵美梨が現れた。

「社長、お疲れ様です。どうぞ」
「ありがとう」

絵美梨はスッときれいな所作で車に乗り込む。

長い髪をサイドで束ね、シルクの上品なブラウスに仕立ての良いノーカラージャケットとアンクル丈のパンツを、スタイル良く着こなしていた。

そしてなによりも、オーラと気品に溢れている。

絵美梨自身は気づいていないのだろうが、どんなに普通を装っても、明らかに周りとは格が違っていた。

服装やメイクの類ではなく、絵美梨の内面から美しく輝くような品の良さが表れ、誰もが思わず見惚れてしまうのだ。

要は絵美梨の美しさに触れる度、そばに控える自分も品性を保たなければと身が引きしまった。

浜子に見送られて屋敷をあとにすると、車で15分ほどで松島グループのホテルに到着する。

要は腕時計で11時55分になるのを確認してから、約束のフレンチレストランに足を踏み入れた。

「いらっしゃいませ、絵美梨お嬢様。お待ちしておりました」

レストランの入り口で、ホテル支配人自らが絵美梨を出迎える。

「こんにちは、ごぶさたしております」
「こちらこそ。お元気でいらっしゃいましたか?」
「はい、おかげさまで」
「お仕事も大変好調のようですね。さあ、どうぞ個室へ。戸川様もつい先程ご案内したところでございます」

ノックのあとに開かれたドアの向こうは、大きな窓から東京の景色を見下ろせる、ゆったりと静かな個室だった。

席に着いていた戸川が、にこやかに立ち上がる。

「絵美梨さん、こんにちは」
「こんにちは、戸川社長。お待たせいたしました」

二人が握手をすると、要は奥に控えていた戸川の秘書に菓子折りを差し出した。

「これはこれは、ありがとうございます」

戸川と絵美梨が椅子に腰を下ろしてから、要たちも席に座る。

戸川は、どうやら絵美梨と二人だけで食事がしたいと思っていたようだが、自分も同席することを要は前もって伝えていた。

「絵美梨さん、まずは乾杯しましょうか」

絵美梨とシャンパンで乾杯すると、戸川は早速話を切り出した。