ただそこに愛があるなら

大阪のサロンオープンに向けて、いよいよラストスパートに入った。

多忙を極めつつ、サロンのデスクでふとした時に目が合うと、要と絵美梨は見つめ合って微笑む。

それだけで心が温かくなり、癒やされた。

「それでは社長、お疲れ様でした」
「緋山もお疲れ様」

毎晩、要は絵美梨を屋敷に送り届けて、いつもの挨拶をする。

そこまでは以前と一緒。
そこからは……

「おやすみ、絵美梨。良い夢を」

要は絵美梨の頬に手を添えて、優しくささやいた。

「おやすみなさい、要くん。夢で会えたらいいな」

甘い声で呟く絵美梨に、ふっと笑ってから、要はゆっくり顔を寄せる。

長いまつ毛をかすかに震わせて目を閉じた絵美梨に、要はそっと口づけた。

唇を離すと、絵美梨が上目遣いに要を見つめる。

ちょっと寂しそうに別れを惜しみ、ねだるような、甘えるような、なんとも愛らしい表情を浮かべた。

要は降参とばかりに、再び絵美梨にキスをする。

いつもより少し深く、長く……

絵美梨の唇から、ん……と吐息がもれて、要は思わず両手で絵美梨を強く抱きしめた。

チュッと唇をついばんでから身体を起こすと、絵美梨は目を潤ませて、妖艶な吐息をつく。

(このままでは抑えが効かない)

要は腕を解くと、「さあ、もう中へ」と絵美梨を促した。

「はい」

絵美梨は頷いたものの、最後にまた要を見上げる。

「あの……」
「どうした?」
「えっと、もうすぐ要くんの誕生日でしょう? だから、その日はまた二人で、あのグランメゾンに行きたくて。だめ?」

話の内容より、絵美梨の可愛らしさに気を奪われてしまった。

「いいけど、絵美梨は忙しいんじゃないか? 無理しないでほしい」
「無理なんかじゃないわ。だって私が行きたいんだもん」
「そうか、分かった。それなら一緒に行こう」
「ほんと? 良かった。じゃあ、約束ね?」

小指を伸ばして差し出す絵美梨は子どもの頃のままで、要は懐かしさに笑みを浮かべて指切りをする。

「楽しみにしてる。じゃあね、要くん。おやすみなさい」

可憐に微笑んでから、ようやく絵美梨はタタッと玄関に向かう。

最後にもう一度振り返り、要に手を振ってから扉の中に姿を消した。