ただそこに愛があるなら

サロンの営業時間になり、いつものように絵美梨も接客に追われる。

その様子を見守りつつ、要は例のSNSをチェックした。

記事は無事に削除されたらしく、アクセス出来なくなっている。

ホッとしてから、今度は戸川と連絡を取り合い、ランチミーティングの予約を入れた。

「社長、戸川様がなるべく早くと仰せで、明後日の12時にアポを取りました」
「分かったわ。サロンの定休日だし、緋山もオフでしょう? ミーティングには私一人で行くから」

絵美梨の言葉に、要はすぐさま首を振る。

「いえ、私も同行します」
「大丈夫だったら。いい大人が保護者に付き添われてる、とか思われたら嫌だもん」

軽くあしらおうとする絵美梨に、要はズイッと歩み出た。

「お嬢様、ご自分の立場をお忘れですか? 一人で行動なさるなど、もってのほか。あなたが知らないと思う相手でも、向こうはあなたのことを知っている、そういう世界にあなたはいらっしゃるのです。あなたが一人でいるところを見かけたことによって、良からぬことを企む者もいないとは言い切れません。この世の人間が全て善人だとお思いでしたら、それは余りにも甘いお考えです。ご自分のことを『いい大人が』とおっしゃるなら、危機管理能力も……」
「あー、もう、分かったから!」

要は知っている。
絵美梨は、長話やお説教がなによりも嫌いなのだ。

案の定、もう耐えられないとばかりに観念した。

「一緒に行けばいいんでしょ!? 行くわよ、地の果てまでも」
「そんなところまでは結構です。では明後日、11時30分にお屋敷までお迎えに上がります」
「……ミーティングが終わったら、買い物に行ってもいい?」
「もちろん。私もご一緒します」
「ヤダ! もういいもん」

絵美梨は拗ねたように頬を膨らませ、要に背を向けて去っていった。