ただそこに愛があるなら

出張から帰ってくると、いよいよ大阪支店オープンに向けて本格始動する。

土地を決めて契約し、サロンの設計図や内装を具体的に詰めていく。

絵美梨はサロンでの接客をこなしながら遅くまで残業し、日々忙しさは増していった。

「あーもう、あっという間に夏が来る。3月のプレオープンまであと9か月よ?」

9か月前でこの忙しさなら、これから一体どうなるのかと、要は絵美梨の身体を心配する。

「社長、今夜はもう帰りましょう。23時ですよ?」
「あと少し。緋山こそ先に帰りなさい。背中の傷が開いたらどうするの?」
「とっくに治ってます! それに私がお嬢様を置いて帰るなど、太陽が西から昇ってもあり得ないと何度申し上げればお分かりいただけるのですか?」
「それ、前は天地が逆さになっても、じゃなかった?」
「ええ、そうですとも。天地が逆さになっても、太陽が西から昇っても、夏なのに雪が降っても、私がお嬢様を置いて帰るなどあり得ないことだと、何度申し上げれば……」

あーもう、分かったわよ!と、遂に絵美梨は根負けする。

「いつか真夏に雪を降らせてみせるからね。その時は私を置いて先に帰るのよ?」
「承知しました。楽しみにお待ちしております」

車の中でも二人はバチバチと言い合っていた。