翌朝。
ロビーで戸川と今池と落ち合い、まずは今池の案内でサロンを巡った。
「最初に友好関係を結んでおけば、絵美梨ちゃんが新しく大阪にサロンを出しても敵対視されないわ」
そう言って今池は、主要なサロンのほとんどに絵美梨を紹介して回った。
「本当にありがとうございます、今池さん」 「いいえー、お安いご用よ。じゃあ次はお買い物ね」
「はい!」
絵美梨と今池がショッピングモールで買い物を楽しむ間、要はカフェで戸川にサロンの立地について相談する。
「この辺りのホテルで、よく著名人のパーティーが開かれてるよ」
「なるほど。サロンでお支度を整えたあと、パーティー会場へはあまり遠くない方がいいですよね」
「ああ。それと駅に直結だと、かえって車では行きづらいかも。徒歩5分くらいで、駐車場を完備した方が喜ばれると思うよ」
「確かにおっしゃる通りです」
地図を広げてあれこれと話し合っていると、絵美梨と今池が手にたくさんの紙袋を抱えて戻って来た。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。とっても楽しくて、たくさん買っちゃったの」
「それは良かったです。今池さん、ありがとうございました」
今池が付き添ってくれるならと、要は安心して絵美梨を送り出すことが出来た。
「どういたしましてー。私も飲み物買って来ようっと」
「あ、それなら私が……」
要が立ち上がると、今池はグイッと要の腕を取る。
予想外の力の強さに、要は驚いた。
「一緒に行きましょー。絵美梨ちゃんは戸川さんと待っててね」
そう言うと今池は、要を引っ張って歩きながら耳元でドスを効かせる。
「で? 要、夕べは行ったの?
「いえ、どこにも」
「はあー? あんたね、今池要の名に恥ずかしくないの?」
「いや、あの。そもそも、今池さんは勘違いされていませんか? 絵美梨お嬢様は、別に私のことなど……」
「なんやて?」
ギラリと今池が目つきを変えて、要は思わず息を呑んだ。
「私のこの目が節穴やと言いたいんか?」
「いえ、とんでもない」
「あんた、あんなに健気な絵美梨ちゃんに、ようそんなこと言えるな? 普通、心痛むやろ。平気なんか?」
そう言われて、要は視線を落とす。
「平気な訳ないです。お嬢様には誰よりも幸せになっていただきたい。今にきっと、お嬢様にふさわしい人が現れるはずです。私はただそれを願っています」
「あほ! なにきれいごと言ってんねん。自分が幸せにしろや。あんたが絵美梨ちゃんにふさわしい男にならんかい!」
「ですが、私はお嬢様とは身分が違います」
「どう違うねん。見せてみぃ」
は?と、要は目をしばたたかせる。
「見せられへんのやったら、オバケと一緒や。要は、目に見えへんもんを信じるんか?身分の違いがなんぼのもんや。そんなん、オバケに食わせとけ」
「えっ、あの?」
「本気で喝入れたろか? 私、関西の美容専門学校行ってた時、ボクシングもやっててんで。なにわの今池って、全国に名の知れたボクサーやったん、知らんか? 知らんのやったら、拳で分からせてやってもええけど?」
「つ、謹んでお断りいたします」
要はゴクリと生唾を飲む。
護身術を習った自分でも、今池には敵いそうにない気がした。
「ほな、またの機会にな」
要の耳元でそう呟くと、今池はくるりと絵美梨を振り返る。
「絵美梨ちゃーん、ハニーラテでいい? 絵美梨ちゃんに似合いそうなのー」
「はい、ありがとうございます」
「すぐ買ってくるわねー」
笑顔でカウンターに向かう今池の二面性に、要は一人恐怖を感じていた。
ロビーで戸川と今池と落ち合い、まずは今池の案内でサロンを巡った。
「最初に友好関係を結んでおけば、絵美梨ちゃんが新しく大阪にサロンを出しても敵対視されないわ」
そう言って今池は、主要なサロンのほとんどに絵美梨を紹介して回った。
「本当にありがとうございます、今池さん」 「いいえー、お安いご用よ。じゃあ次はお買い物ね」
「はい!」
絵美梨と今池がショッピングモールで買い物を楽しむ間、要はカフェで戸川にサロンの立地について相談する。
「この辺りのホテルで、よく著名人のパーティーが開かれてるよ」
「なるほど。サロンでお支度を整えたあと、パーティー会場へはあまり遠くない方がいいですよね」
「ああ。それと駅に直結だと、かえって車では行きづらいかも。徒歩5分くらいで、駐車場を完備した方が喜ばれると思うよ」
「確かにおっしゃる通りです」
地図を広げてあれこれと話し合っていると、絵美梨と今池が手にたくさんの紙袋を抱えて戻って来た。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。とっても楽しくて、たくさん買っちゃったの」
「それは良かったです。今池さん、ありがとうございました」
今池が付き添ってくれるならと、要は安心して絵美梨を送り出すことが出来た。
「どういたしましてー。私も飲み物買って来ようっと」
「あ、それなら私が……」
要が立ち上がると、今池はグイッと要の腕を取る。
予想外の力の強さに、要は驚いた。
「一緒に行きましょー。絵美梨ちゃんは戸川さんと待っててね」
そう言うと今池は、要を引っ張って歩きながら耳元でドスを効かせる。
「で? 要、夕べは行ったの?
「いえ、どこにも」
「はあー? あんたね、今池要の名に恥ずかしくないの?」
「いや、あの。そもそも、今池さんは勘違いされていませんか? 絵美梨お嬢様は、別に私のことなど……」
「なんやて?」
ギラリと今池が目つきを変えて、要は思わず息を呑んだ。
「私のこの目が節穴やと言いたいんか?」
「いえ、とんでもない」
「あんた、あんなに健気な絵美梨ちゃんに、ようそんなこと言えるな? 普通、心痛むやろ。平気なんか?」
そう言われて、要は視線を落とす。
「平気な訳ないです。お嬢様には誰よりも幸せになっていただきたい。今にきっと、お嬢様にふさわしい人が現れるはずです。私はただそれを願っています」
「あほ! なにきれいごと言ってんねん。自分が幸せにしろや。あんたが絵美梨ちゃんにふさわしい男にならんかい!」
「ですが、私はお嬢様とは身分が違います」
「どう違うねん。見せてみぃ」
は?と、要は目をしばたたかせる。
「見せられへんのやったら、オバケと一緒や。要は、目に見えへんもんを信じるんか?身分の違いがなんぼのもんや。そんなん、オバケに食わせとけ」
「えっ、あの?」
「本気で喝入れたろか? 私、関西の美容専門学校行ってた時、ボクシングもやっててんで。なにわの今池って、全国に名の知れたボクサーやったん、知らんか? 知らんのやったら、拳で分からせてやってもええけど?」
「つ、謹んでお断りいたします」
要はゴクリと生唾を飲む。
護身術を習った自分でも、今池には敵いそうにない気がした。
「ほな、またの機会にな」
要の耳元でそう呟くと、今池はくるりと絵美梨を振り返る。
「絵美梨ちゃーん、ハニーラテでいい? 絵美梨ちゃんに似合いそうなのー」
「はい、ありがとうございます」
「すぐ買ってくるわねー」
笑顔でカウンターに向かう今池の二面性に、要は一人恐怖を感じていた。



