ただそこに愛があるなら

「お疲れ様でした、お嬢様。今、紅茶を淹れます」
「ありがとう。あー、楽しかった!」

ソファに座ると、絵美梨は思い出したように笑みを浮かべた。

「今池さんって、本当にすてきな方よね。一緒にいるとパワーをもらえるし、悩みも吹き飛ばしてくれそう。ふふふっ」

クッションを胸に抱えて可憐に微笑む絵美梨に、要は今池の言葉を思い出す。

(お嬢様とスイートルームに泊まるのは、確かに言われてみれば良くないな。お嬢様は一人暮らしをされたことがないから、ホテルの部屋で一人で眠るのは怖いとおっしゃるし、今まで気にも留めていなかったが……)

一度気にすると、どうにかしなくてはいけないと思えてくる。

(お嬢様が寝室に入られたらフロントに下りて、支配人に従業員用の仮眠室を使わせてもらえるか聞いてみよう。明日の朝早めに戻れば、お嬢様にはなにも気づかれなくて済む)

そう思い、絵美梨を早めに寝室へと促すことにした。

「お嬢様、お疲れでしょうから今夜はもうお休みください。明日もサロン巡りで忙しい日になりますし」
「そうね。それに今池さんとショッピングもしたいし。誰かとお洋服を選ぶなんて、久しぶりでわくわくしちゃう」

無邪気にはしゃぐ絵美梨に、要も頬を緩めた。

「ではどうぞごゆっくりお休みください。明日の朝6時にモーニングコールをしますので」
「分かったわ。緋山もお疲れ様。おやすみなさい」

絵美梨は要ににっこり笑いかけてから、寝室へと姿を消した。