ただそこに愛があるなら

3月になり、再び大阪へ行くがやって来た。

戸川のパーティーて知り合った人のツテで、大阪の美容関係のスタッフに挨拶に行くのだが、それを小耳に挟んだ今池が、せっかくだから自分の関係者も紹介すると言って同行することになった。
その流れで結局戸川も含め、4人で行くことになる。

行きはサロンでの仕事を終えてから最終の飛行機に乗る予定だったが、戸川と今池に合わせて夕方の便に変更した。

「絵美梨ちゃん、お隣の席でもいい?」
「ええ、もちろん」

今池と絵美梨は空の上で、楽しそうにおしゃべりに花を咲かせている。

要は、成り行きで隣の席になった戸川の視線が気になって仕方なかった。

「戸川社長、コーヒーでも頼みましょうか?」
「いや、結構」

そう言いつつも、戸川は要になにか言いたそうな雰囲気だ。

「どこかの御曹司と結婚してくれた方が、まだ諦めがつくな」
「……はい?」
「気にするな、独り言だ」

だがそのあとも、隣で戸川は忌々しそうに呟く。

「なんで中途半端に君なんだ? 俺だって負けてないだろう?」
「あの、戸川社長。一体なんのお話を?」
「気にするな、独り言だ。大体あんなにも素晴らしい女性に、あんなにもいじらしいことを言われて、平気でいられる男の気持ちが理解出来ない。その上、彼女の方が諦め切れないと口にするなんて、それほどの男なのか? 君は」
「……はい?」
「気にするな、独り言だ」

居心地の悪さに、要は心の中で、早く着いてくれと唱えていた。