ただそこに愛があるなら

(困ったな、花瓶なんてうちにはないし)

自宅マンションに戻ると、要は手にした花束に目を落とす。

男の一人暮らしの部屋には申し訳ないほどきれいな花束。
絵美梨の笑顔によく似合う、明るく優しい色合いだった。

要は使い終わったミネラルウォーターのペットボトルにはさみを入れて、即席の花瓶を作る。

花を活けると、良い香りが広がった。
部屋中が華やかな雰囲気になり、まるで絵美梨がそこにいるような気がしてくる。

ふっと頬を緩めると、要はコーヒーを淹れてソファに座った。

タブレットで明日のスケジュールを確認していると、未読のメールに気づく。

(誰からだろう?)

開いてみると、マッチングアプリの戸川社長からのメールだった。

【先日はパーティーにお越しいただき、ありがとうございました】という書き出しで、あの時少しお話ししたパートナーシップについて、改めて社長にご説明差し上げたい、と書かれている。

要は少し考えを巡らせてから、早速返事を入力した。

パーティーでのお礼を述べ、パートナーシップについては明日にでも社長に伝えてから、改めてご連絡差し上げると書いて送信した。

(戸川社長か……。やはりお嬢様を狙っているのだろうな)

男の勘でそう確信する。

(お嬢様はどうなのだろう。まだ24だし、今は仕事が第一という感じだが、いずれは結婚されるはずだ。今日の澤井夫人がお見合いの話を進めて、お嬢様はどこかの御曹司と一緒になるのだろうか)

絵美梨には幸せになってほしい。
幼い頃に母親を亡くした上に、令嬢という立場から常に周りを気にして生活してきた。

(ボディガードとして自分が常にそばにいることを、疎ましく思っているだろう。これからは愛する人がいつもそばで、お嬢様を守ってくれるといい)

要は心からそう願った。