1限目は英語だった。
「はい、じゃあ隣同士でペアになって会話練習してー」
先生が軽やかな号令をかける。
わたしにとっては死刑宣告のような言葉だ。
船の上から、一人だけ海へ放り出される合図に等しい。
ガタガタと椅子を引く音が響く。
磁石が引き合うみたいに、40人のクラスメイトたちは一瞬にして20個の世界を形成する。
数秒後。
唯の周りだけが、ぽっかりと空いた真空になった。
あからさまな拒絶の言葉はない。
ただ、目を合わせないだけだ。
教卓に立つ教師を見つめた。
若い男性教師だ。
先生はわたしの視線に気づいている。
間違いなく、気づいている。
けれど先生は、わざとらしく手元のプリントの端を揃え、腕時計に視線を落とした。
(関わりたくない)
その本音が、透視したかのように伝わってくる。
いじめに気づいてしまったら、対応しなければならない。保護者に連絡したり、学年主任に報告したり、面倒な仕事が増える。
だから、見なかったことにする。
「……じゃあ、余った人は教科書を音読しとくように」
教師は、わたしの名前さえ呼ばなかった。
余った人。
主語すら与えられない、ただの余剰物。
余剰どころか邪魔ものだ。先生にとっては。
クラス中がペアという最小単位の絆で繋がり、小さな宇宙を作っている中で、わたしはひとり、教科書を音読した。しようとした。
声を出して英語を読んでみるけれど、自分の声が自分の耳に届かない。
言葉は空気という媒体を失って、誰にも届かずに消滅していく。
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