「お嬢様と、決闘しました」
「……へぇ」
ディランが目を丸くする。
まるで面白い話を聞いた子どものような顔だった。
「それで?」
「……負けました」
「君が?」
「はい」
一瞬の沈黙。
そしてディランは、ぽんと膝を叩いた。
「ちょっとレイ。お酒を持ってきて。
これは腰を据えて聞かないといけない」
「だから言いたくなかったんですよ」
観念して、俺は話した。
お嬢様が俺を遠征に行かせ、
その裏で綿密に準備を整えていたこと。
6人がかりで――
さらに予想外の人物まで使い、
完璧に逃げ場を塞いでいたことを。
すべて聞き終えた瞬間、
「……く、くく……」
ディランの肩が震えた。
「ははははは!」
腹を抱えて笑う。
この人が、こんなふうに笑う姿を見るのは初めてだった。
「それは……さぞ見ものだったろうな」
「笑い事ではありません」
「いや、最高だ」
悪びれもせず言うディランに、思わずため息が漏れる。
「ああ……こんなに笑ったのは、いつぶりだろう」
涙まで浮かべるとは、本当に失礼な人だ。
だが――
笑いが収まったあと、ディランの声は静かだった。
「君は、悔しかったかい?」
「……はい」
「なぜだと思う」
俺は少し考え、口を開いた。
「俺は……守る覚悟があると思っていました。
でも本当は――」
言葉が、自然と零れる。
「“変わらない関係”を守りたかっただけだったんです」
その瞬間、胸の奥で何かがほどけた。
「……彼女は、前に進もうとしていたのに」
ディランは、しばらく黙っていた。
やがて、静かに言う。
「だから君は、今もここにいる」
その視線が、真っ直ぐ俺を射抜いた。
「逃げなかった。
“並ぶ”という選択をしたんだ」
俺は、深く頭を下げた。
「……はい」
「なら、十分だ」
そう言って、少しだけ柔らかく笑う。
「セナ。
君が彼女を守ろうとしたことを、俺は否定しない」
一拍。
「だが、これからは――」
「一緒に守ろう」
胸の奥が、静かに熱を帯びた。
「……承知しました、殿下」
その言葉に、嘘はなかった。
ふと、指輪のことを思い出す。
あの宝石はきっと、
“奪う”ためのものじゃない。
変わり続ける中で、
それでも選び続ける覚悟の証だ。
(お嬢様――)
守るだけじゃない。
あなたの隣で、同じ景色を見る。
それが、俺の選んだ答えだ。
「……へぇ」
ディランが目を丸くする。
まるで面白い話を聞いた子どものような顔だった。
「それで?」
「……負けました」
「君が?」
「はい」
一瞬の沈黙。
そしてディランは、ぽんと膝を叩いた。
「ちょっとレイ。お酒を持ってきて。
これは腰を据えて聞かないといけない」
「だから言いたくなかったんですよ」
観念して、俺は話した。
お嬢様が俺を遠征に行かせ、
その裏で綿密に準備を整えていたこと。
6人がかりで――
さらに予想外の人物まで使い、
完璧に逃げ場を塞いでいたことを。
すべて聞き終えた瞬間、
「……く、くく……」
ディランの肩が震えた。
「ははははは!」
腹を抱えて笑う。
この人が、こんなふうに笑う姿を見るのは初めてだった。
「それは……さぞ見ものだったろうな」
「笑い事ではありません」
「いや、最高だ」
悪びれもせず言うディランに、思わずため息が漏れる。
「ああ……こんなに笑ったのは、いつぶりだろう」
涙まで浮かべるとは、本当に失礼な人だ。
だが――
笑いが収まったあと、ディランの声は静かだった。
「君は、悔しかったかい?」
「……はい」
「なぜだと思う」
俺は少し考え、口を開いた。
「俺は……守る覚悟があると思っていました。
でも本当は――」
言葉が、自然と零れる。
「“変わらない関係”を守りたかっただけだったんです」
その瞬間、胸の奥で何かがほどけた。
「……彼女は、前に進もうとしていたのに」
ディランは、しばらく黙っていた。
やがて、静かに言う。
「だから君は、今もここにいる」
その視線が、真っ直ぐ俺を射抜いた。
「逃げなかった。
“並ぶ”という選択をしたんだ」
俺は、深く頭を下げた。
「……はい」
「なら、十分だ」
そう言って、少しだけ柔らかく笑う。
「セナ。
君が彼女を守ろうとしたことを、俺は否定しない」
一拍。
「だが、これからは――」
「一緒に守ろう」
胸の奥が、静かに熱を帯びた。
「……承知しました、殿下」
その言葉に、嘘はなかった。
ふと、指輪のことを思い出す。
あの宝石はきっと、
“奪う”ためのものじゃない。
変わり続ける中で、
それでも選び続ける覚悟の証だ。
(お嬢様――)
守るだけじゃない。
あなたの隣で、同じ景色を見る。
それが、俺の選んだ答えだ。

