……それなのに。
「セナ、その手」
弱々しい声で、そう言われた。
「……豆、潰れてる」
なぜ、そんなところに気づくのだろう。
自分の方が、熱も出して辛いはずなのに。
どうして、他人の手の傷なんて――
「これくらい、大丈夫です」
そう答えると、少しだけ困ったように眉を下げられた。
「だめだよ。大事な手だよ」
胸の奥が、静かに締めつけられた。
数日後。
少し元気を取り戻したお嬢様が、訓練場まで足を運んできた。
「セナの剣、きれいだね」
その一言が、思いのほか深く胸に残った。
技でも、強さでもない。
ただ“きれいだ”と言ってくれたことが、ひどく嬉しかった。
しばらく話しているうちに、顔色少し悪くなってきて。
帰り道、ふらついたお嬢様を背負った。
……軽すぎた。
思わず息を呑むほど、驚くほどに。
これほど細い身体で、
あれほどの力を使ったのかと思うと、胸が痛んだ。
途中でディランと合流し、交代することになった。
当然の判断だ。
ディランのほうが、立場も、責任もある。
それでも――
背中から伝わっていた温もりが離れた瞬間、
言葉にできない無力感が胸を満たした。
守りたいと思っても、
最後にその役目を担うのは自分ではない。
その事実を、静かに突きつけられた気がした。
けれど。
お嬢様は、少しずつ元気を取り戻している。
それだけで――
今は、十分だ。
「セナ、その手」
弱々しい声で、そう言われた。
「……豆、潰れてる」
なぜ、そんなところに気づくのだろう。
自分の方が、熱も出して辛いはずなのに。
どうして、他人の手の傷なんて――
「これくらい、大丈夫です」
そう答えると、少しだけ困ったように眉を下げられた。
「だめだよ。大事な手だよ」
胸の奥が、静かに締めつけられた。
数日後。
少し元気を取り戻したお嬢様が、訓練場まで足を運んできた。
「セナの剣、きれいだね」
その一言が、思いのほか深く胸に残った。
技でも、強さでもない。
ただ“きれいだ”と言ってくれたことが、ひどく嬉しかった。
しばらく話しているうちに、顔色少し悪くなってきて。
帰り道、ふらついたお嬢様を背負った。
……軽すぎた。
思わず息を呑むほど、驚くほどに。
これほど細い身体で、
あれほどの力を使ったのかと思うと、胸が痛んだ。
途中でディランと合流し、交代することになった。
当然の判断だ。
ディランのほうが、立場も、責任もある。
それでも――
背中から伝わっていた温もりが離れた瞬間、
言葉にできない無力感が胸を満たした。
守りたいと思っても、
最後にその役目を担うのは自分ではない。
その事実を、静かに突きつけられた気がした。
けれど。
お嬢様は、少しずつ元気を取り戻している。
それだけで――
今は、十分だ。

