第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

その頃。

「レオ」

「は、はい!」

「次に同じことをしたら」

にこっ。

「厨房出入り禁止にします」

「そ、それだけは!!」

「冗談です」

「え……?」

「半分」

「半分!?!?」

少し離れた場所で、レイが小さく咳払いをした。

「……こちらも同様です。殿下は“自重”を」

「ああ、わかった」

2人の叱責は、同時に終わった。

沈黙の廊下。

「……なんか俺たち」

レオがぽつりと呟く。

「左右から説教されてましたね」

「……否定はしない」

2人は同時に、ティアナの部屋の扉を見つめた。

中の静けさを壊さぬように。

「次は」

レオが小声で言う。

「ちゃんと静かにします。」

「同意する」

「殿下も子供みたいなところがあるんですね。
ちょっと意外でした」

「俺もだ、自分も知らない一面があったんだな」


そのとき、扉の向こうから微かな物音がした。

2人は同時に背筋を伸ばす。

――今度こそ、間違えないために。