第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない

ユウリと入れ違いに、レオが部屋へ入ってきた。

「お嬢さーん、おはよう!
調子はどう??」

そう言いながら、レオは両手に抱えた籠を持ち上げる。

「りんごゼリーも作ってきたんだ!」

「……あれ、殿下もいる」

少しだけ目を丸くしたあと、すぐにいつもの笑顔に戻る。
にこにこと人懐っこい笑顔のまま、レオは部屋の中へ入ってきた。

テーブルに籠を置くと、透明な器に入った淡い琥珀色のゼリーが、朝の光を受けてきらりと揺れる。

「喉ごしがいいように、少し柔らかめにしてあるんだ。
お嬢さん、食べられそう?」

「……うん」

私がそう答えると、レオは嬉しそうに頷いた。
レオは器を手に取ると、にこっと笑って私のそばに腰を下ろした。

「じゃ、俺が食べさせますね。
ほら、りんごゼリー。冷たすぎないから」

「ありがとう……」

スプーンが口元へ近づいた、その瞬間。

「待て」

低い声が割り込む。

レオの手がぴたりと止まった。

「……殿下?」

ディランは一歩前に出て、静かに言う。

「俺がやろう」

「え? いいですよ!?殿下ずっと付き添ってて疲れちゃったでしょ!」

「疲れてないよ」

「いや、いいですって」

レオは苦笑いを浮かべる。

「看病は慣れてるほうがいいかなって。
殿下、不器用そうですし」

ぴくり。
ディランのこめかみが、わずかに動いた。
ディランに不器用というのはレオぐらいだろうな。