「……訓練の成果です」
「剣、振りすぎ」
そう言ってから、
小さく付け足す。
「……お互いさま、だけどね」
彼は、
小さく肩をすくめた。
「……お嬢様が、
無茶をなさるものですから」
「そうだね」
私は、
その手を離さずに続ける。
「でも、いつも……
無茶に付き合ってくれる」
一瞬、
セナの指先が強張る。
「それはもちろんです」
静かに、
迷いのない声。
「私は、
お嬢様の騎士ですから」
少しの沈黙。
「……でも、だめだね」
私が、
ぽつりと言う。
「無理しすぎるのも。
怪我したら、大変だよ」
その言葉に、
セナは困ったように笑った。
「……あなたに言われると、
反論できませんね」
罰が悪そうで、
それでもどこか嬉しそうな表情。
ゆっくりと、
手が離される。
――はずだった。
セナは、
一歩だけ、こちらに近づいた。
ほんの半歩。
吐息が触れるほどの距離。
視線が絡み、
言葉が、止まる。
「……」
セナの喉が、
小さく鳴る。
伸ばしかけた手が、
途中で止まった。
指先が、
私の頬に触れそうで――触れない。
「……」
一瞬、
何かを決意したような目。
けれど、
次の瞬間には、
その一歩を引いた。
「……失礼しました」
低く、
抑えた声。
「今は……
いけませんね」
自分に言い聞かせるように、
そう呟く。
「療養中のお嬢様に、
余計な負担をかけるわけには」
深く一礼し、
距離を取る。
「どうか、
ゆっくりお休みください」
扉へ向かう背中は、
少しだけ、
強張っていた。

