「ルイ、喉が渇いたわ」
アリスが口を開く。
「かしこまりました、お嬢様。
そちらのカフェに入りましょうか。
スコーンが絶品ですよ」
「いいわね」
完璧な間。
完璧な執事ムーブ。
「行きますよ、ティアナさん」
「……はい」
自然に返事をしてから、はっとする。
(まだやるの!?)
私はメイド服の裾をつまみ、
2人の後をついて歩き出した。
どうやら――
この茶番は、
スコーンが来るまででは終わらないらしい。
店内に入ると、すぐに席へ案内された。
その瞬間――
ルイがさっとアリスの椅子を引く。
「……」
私は反射的に横に立ち、
なぜかルイの隣で待機していた。
「2人とも、座っていいわよ。
一緒に食べましょう」
「ありがとうございます、お嬢様」
ルイは完璧な所作で一礼し、席に着く。
「……ありがとうございます」
私もつられて頭を下げ、腰掛けた。
もうツッコむ気力はない。
「では――
こちらのスコーンと紅茶のセットを、3人前お願いします」
ルイがごく自然に店員さんへ声をかける。
……しれっと注文までしている。
店員さんも一瞬だけきょとんとしたが、
すぐににこやかに頷いた。
「かしこまりました」
――だめだ。
完全に、信じられている。

