……頭が、割れる。
視界が白い。
胃の奥が、気持ち悪い。
「……っ」
身じろぎした瞬間、
どこかで低いうめき声がした。
「……うるさい……」
(……?)
ゆっくり視線を動かす。
そこには――
ソファにだらしなく横たわる、ディランの姿。
(……あ)
記憶が、波のように押し寄せてきた。
酒。
勝負。
口説く発言。
掴み合い。
(……最悪だ)
その時。
――コンコン。
控えめなノック。
「殿下。
朝のご予定ですが――」
扉が開く。
入ってきたのは、
いつも通りきっちりした身なりの側近、レイだった。
そして――
室内を一望した、その瞬間。
「………………」
時間が、止まった。
床に転がる空の酒瓶。
ソファで死んだように寝ている王子。
そして、その隣で頭を抱える騎士。
「………………」
レイの片眉が、ぴくりと動く。
「……殿下?」
「……レイ……頭が……」
「なぜ、セナさんがここに?」
冷静な声だが、
目は明らかに動揺している。
「……飲みました……」
「見れば分かります」
きっぱりと言われた。
「しかも、
相当、ですね」
レイはゆっくりと歩み寄り、
転がる酒瓶を一本拾い上げる。
「……この銘柄を、この量?」
視線が、俺と殿下を往復した。
「……奇跡的に、ご無事ですね」
「無事じゃない……」
ディランが、ソファに顔を押しつけたまま呻く。
「……セナ」
「……はい」
「昨夜の記憶、あるか……?」
「……途中から、曖昧です」
「……そうか……」
2人して、沈黙。
レイは深く、深く息を吸い――
「後で、
詳しく聞かせていただきます」
にこやかに、そう言った。
(……終わった)
「まずは水を。
殿下は本日、謁見は延期します」
「……ありがとう……」
「セナ」
「……はい」
「あなたは――
とりあえず、
ここで何があったかを“整理”しておいてください」
静かな声。
だが、逃げ場はない。
「……承知しました」
レイは踵を返し、
扉の前で一度だけ振り返った。
「それと」
にこり、と微笑む。
「次は、
酒量を“相談”してください」
扉が、閉まった。
「………………」
「………………」
再び、沈黙。
「……セナ」
「……はい」
「……二度と、
あの勝負はしない」
「……全面的に同意します」
頭痛と後悔と気まずさを抱えたまま、
二日酔いの朝は、静かに始まった。
視界が白い。
胃の奥が、気持ち悪い。
「……っ」
身じろぎした瞬間、
どこかで低いうめき声がした。
「……うるさい……」
(……?)
ゆっくり視線を動かす。
そこには――
ソファにだらしなく横たわる、ディランの姿。
(……あ)
記憶が、波のように押し寄せてきた。
酒。
勝負。
口説く発言。
掴み合い。
(……最悪だ)
その時。
――コンコン。
控えめなノック。
「殿下。
朝のご予定ですが――」
扉が開く。
入ってきたのは、
いつも通りきっちりした身なりの側近、レイだった。
そして――
室内を一望した、その瞬間。
「………………」
時間が、止まった。
床に転がる空の酒瓶。
ソファで死んだように寝ている王子。
そして、その隣で頭を抱える騎士。
「………………」
レイの片眉が、ぴくりと動く。
「……殿下?」
「……レイ……頭が……」
「なぜ、セナさんがここに?」
冷静な声だが、
目は明らかに動揺している。
「……飲みました……」
「見れば分かります」
きっぱりと言われた。
「しかも、
相当、ですね」
レイはゆっくりと歩み寄り、
転がる酒瓶を一本拾い上げる。
「……この銘柄を、この量?」
視線が、俺と殿下を往復した。
「……奇跡的に、ご無事ですね」
「無事じゃない……」
ディランが、ソファに顔を押しつけたまま呻く。
「……セナ」
「……はい」
「昨夜の記憶、あるか……?」
「……途中から、曖昧です」
「……そうか……」
2人して、沈黙。
レイは深く、深く息を吸い――
「後で、
詳しく聞かせていただきます」
にこやかに、そう言った。
(……終わった)
「まずは水を。
殿下は本日、謁見は延期します」
「……ありがとう……」
「セナ」
「……はい」
「あなたは――
とりあえず、
ここで何があったかを“整理”しておいてください」
静かな声。
だが、逃げ場はない。
「……承知しました」
レイは踵を返し、
扉の前で一度だけ振り返った。
「それと」
にこり、と微笑む。
「次は、
酒量を“相談”してください」
扉が、閉まった。
「………………」
「………………」
再び、沈黙。
「……セナ」
「……はい」
「……二度と、
あの勝負はしない」
「……全面的に同意します」
頭痛と後悔と気まずさを抱えたまま、
二日酔いの朝は、静かに始まった。

