「それにしても……
ナナ嬢は、マルクと付き合いが長いのですか?」
「ナナ、で構いません」
彼女は微笑んだ。
「ええ。
なんだかんだで、長く一緒におりますね」
「では、ナナ」
私は苦笑する。
「こんなに長く一緒にいてくれるのは、
ナナくらいでしょうね」
「そうかもしれませんね」
ナナは少し照れたように笑ってから、
ぽつりと言った。
「マルク様は、だらしないし、
不真面目で、遊んでばかりのポンコツです」
少しだけ間を置いて、
「でも」
彼女は続けた。
「とても、優しい人です」
湖での光景が、脳裏によみがえる。
ナナが落ちた瞬間、
迷いなく飛び込んだ兄の姿。
(……私は知らなかった)
マルクに、
あんなふうに誰かを想って、
即座に行動できる強さがあるなんて。
「私は……」
気づけば、言葉がこぼれていた。
「長く一緒にいたはずなのに、
兄のことを、何も知りませんでした」
ちがう、私は首をふる。
「知ろうともしなかった」
私とマルクはあまり似ておらず、私は愛人の子だと言われたこともある。母 マリアンヌの扱いもあからさまだった。
幼いころは、確かに一緒にいた。
前を歩いて、手を引いてくれた。
けれど、私が剣術や馬術に打ち込むようになってから、
何かが変わった。
突き放された、と感じた。
マルクは努力をやめ、
何事にも真面目に向き合わなくなった。
いつも周囲を困らせている。
それから私は、
兄に期待しなくなったのだ。
「……嫌われているんです」
ぽつりと、そう言った。
ナナは、静かに首を振った。
「そんなこと、ありませんよ」
その一言だけで、
胸の奥が、少しだけ温かくなった。
ナナ嬢は、マルクと付き合いが長いのですか?」
「ナナ、で構いません」
彼女は微笑んだ。
「ええ。
なんだかんだで、長く一緒におりますね」
「では、ナナ」
私は苦笑する。
「こんなに長く一緒にいてくれるのは、
ナナくらいでしょうね」
「そうかもしれませんね」
ナナは少し照れたように笑ってから、
ぽつりと言った。
「マルク様は、だらしないし、
不真面目で、遊んでばかりのポンコツです」
少しだけ間を置いて、
「でも」
彼女は続けた。
「とても、優しい人です」
湖での光景が、脳裏によみがえる。
ナナが落ちた瞬間、
迷いなく飛び込んだ兄の姿。
(……私は知らなかった)
マルクに、
あんなふうに誰かを想って、
即座に行動できる強さがあるなんて。
「私は……」
気づけば、言葉がこぼれていた。
「長く一緒にいたはずなのに、
兄のことを、何も知りませんでした」
ちがう、私は首をふる。
「知ろうともしなかった」
私とマルクはあまり似ておらず、私は愛人の子だと言われたこともある。母 マリアンヌの扱いもあからさまだった。
幼いころは、確かに一緒にいた。
前を歩いて、手を引いてくれた。
けれど、私が剣術や馬術に打ち込むようになってから、
何かが変わった。
突き放された、と感じた。
マルクは努力をやめ、
何事にも真面目に向き合わなくなった。
いつも周囲を困らせている。
それから私は、
兄に期待しなくなったのだ。
「……嫌われているんです」
ぽつりと、そう言った。
ナナは、静かに首を振った。
「そんなこと、ありませんよ」
その一言だけで、
胸の奥が、少しだけ温かくなった。

