「……わかった」
「よし、頼んだ」
エリックの一言で、あれよあれよという間に長い前髪が分けられていく。
急に視界が開け、妙に落ち着かない。
鏡に映る俺は――まるで別人だ。
紅い瞳が、逃げ場もなくさらされている。
「……みれる程度にはなったな」
エリックが、ふんと鼻を鳴らす。
「似合っているな」
オリバー団長も、穏やかに微笑んだ。
その視線に、少しだけ胸の奥が軽くなる。
そして、そのままパーティ会場へと移動する。
煌びやかな光、柔らかな音楽、華やかな人々。
――ここで、踊るのか。俺が。
できるのか。
しかも、お嬢様以外の人と……?
「じゃあ、一曲踊ってこい」
「……は?」
「そこの令嬢だ。後ろ姿の」
「……は?」
「話は通してある。誘ってこい」
「……は?」
「早くしろ」
有無を言わせぬ圧。
逃げ道はない。
……仕方なく、俺はその令嬢のもとへ歩み寄る。
心臓がやけにうるさい。
そして、令嬢が振り向いた。
「……本日は、私が貴方のお相手です」
無表情のまま、そう告げたのは――
お嬢様の侍女、アリスだった。
いつものメイド服ではなく、華やかなドレスに身を包んでいる。
……違和感がすごい。
「全く知らない令嬢よりはいいだろう」
背後から、エリックの声が飛んでくる。
反論は、できなかった。
「さて」
アリスは淡々と続ける。
「私をお嬢様だと思って、エスコートしてください。
足を踏んだら――私も、このヒールで踏み返しますので」
視線が自然と、彼女の足元に落ちる。
そのヒールは鋭く、細く――
(……凶器だな)
俺は静かに息を整え、覚悟を決めた。
これは、踊りではない。
訓練だ。
「よし、頼んだ」
エリックの一言で、あれよあれよという間に長い前髪が分けられていく。
急に視界が開け、妙に落ち着かない。
鏡に映る俺は――まるで別人だ。
紅い瞳が、逃げ場もなくさらされている。
「……みれる程度にはなったな」
エリックが、ふんと鼻を鳴らす。
「似合っているな」
オリバー団長も、穏やかに微笑んだ。
その視線に、少しだけ胸の奥が軽くなる。
そして、そのままパーティ会場へと移動する。
煌びやかな光、柔らかな音楽、華やかな人々。
――ここで、踊るのか。俺が。
できるのか。
しかも、お嬢様以外の人と……?
「じゃあ、一曲踊ってこい」
「……は?」
「そこの令嬢だ。後ろ姿の」
「……は?」
「話は通してある。誘ってこい」
「……は?」
「早くしろ」
有無を言わせぬ圧。
逃げ道はない。
……仕方なく、俺はその令嬢のもとへ歩み寄る。
心臓がやけにうるさい。
そして、令嬢が振り向いた。
「……本日は、私が貴方のお相手です」
無表情のまま、そう告げたのは――
お嬢様の侍女、アリスだった。
いつものメイド服ではなく、華やかなドレスに身を包んでいる。
……違和感がすごい。
「全く知らない令嬢よりはいいだろう」
背後から、エリックの声が飛んでくる。
反論は、できなかった。
「さて」
アリスは淡々と続ける。
「私をお嬢様だと思って、エスコートしてください。
足を踏んだら――私も、このヒールで踏み返しますので」
視線が自然と、彼女の足元に落ちる。
そのヒールは鋭く、細く――
(……凶器だな)
俺は静かに息を整え、覚悟を決めた。
これは、踊りではない。
訓練だ。

