そして、しばらくして。
「……もういいだろう」
エリックが、そう言った。
「これくらい踊れれば、十分だ」
「……ほんと?」
「ああ。ただし――」
一拍、間を置く。
エリックは腕を組み、まっすぐ俺を見る。
「まず。
お前は、誰と踊りたい?」
そんなの、決まっている。
――お嬢様だ。
だが、それを口にしたら。
身分がどうとか、立場がどうとか。
きっと、そう言われると思った。
少しだけ、言葉に詰まっていると。
「……一人しか、いないんだろ?」
「……うん」
小さく、頷いた。
「なら、その人のことだけ考えろ」
エリックは、思ったより静かな声で言う。
「ダンスは、思いやりだ。
相手を導くものだ」
一歩、踏み出すように。
「踊る相手が、美しくいられるように導く。
それが、紳士だ」
「……」
正直、笑われると思っていた。
俺みたいなやつが、
お嬢様と踊りたいなんて思うのは、
身の程知らずだって。
「……なんだ、その顔は」
「……いや」
俺は、素直に言った。
「俺みたいなやつが、
お嬢様と踊りたいって言ったたら、
バカにされると思ったから」
「はあ……」
エリックは、深くため息をついた。
「……俺が貴族主義だって噂、
聞いてるんだろ」
図星で、何も言えなかった。
「勘違いするな」
低く、はっきりした声。
「俺が嫌いなのは、身分じゃない。
努力もしないで、
野蛮で、がさつで、
それを誇るようなやつだ」
一拍。
「美しくなろうともしない。
向上しようともしない。
そういうやつが、俺は嫌いなんだ」
そして、こちらを見る。
「……だが、お前は違う」
胸が、わずかに跳ねる。
「ちゃんと努力してる。
言われたことをやるだけじゃない。
どうすれば良くなるか、考えてる」
「美しくなろうとしてる」
その一言が、胸に落ちた。
「だから――」
エリックは、きっぱりと言った。
「努力して、隣に立とうとしてるやつを、
俺はバカになんて、しない」
その言葉は、飾り気がなくて。
でも、妙に胸に残った。
……ああ。
この人、本当に厳しいけど。
ちゃんと、人を見てる。
意外と――
いいやつだ。
「……もういいだろう」
エリックが、そう言った。
「これくらい踊れれば、十分だ」
「……ほんと?」
「ああ。ただし――」
一拍、間を置く。
エリックは腕を組み、まっすぐ俺を見る。
「まず。
お前は、誰と踊りたい?」
そんなの、決まっている。
――お嬢様だ。
だが、それを口にしたら。
身分がどうとか、立場がどうとか。
きっと、そう言われると思った。
少しだけ、言葉に詰まっていると。
「……一人しか、いないんだろ?」
「……うん」
小さく、頷いた。
「なら、その人のことだけ考えろ」
エリックは、思ったより静かな声で言う。
「ダンスは、思いやりだ。
相手を導くものだ」
一歩、踏み出すように。
「踊る相手が、美しくいられるように導く。
それが、紳士だ」
「……」
正直、笑われると思っていた。
俺みたいなやつが、
お嬢様と踊りたいなんて思うのは、
身の程知らずだって。
「……なんだ、その顔は」
「……いや」
俺は、素直に言った。
「俺みたいなやつが、
お嬢様と踊りたいって言ったたら、
バカにされると思ったから」
「はあ……」
エリックは、深くため息をついた。
「……俺が貴族主義だって噂、
聞いてるんだろ」
図星で、何も言えなかった。
「勘違いするな」
低く、はっきりした声。
「俺が嫌いなのは、身分じゃない。
努力もしないで、
野蛮で、がさつで、
それを誇るようなやつだ」
一拍。
「美しくなろうともしない。
向上しようともしない。
そういうやつが、俺は嫌いなんだ」
そして、こちらを見る。
「……だが、お前は違う」
胸が、わずかに跳ねる。
「ちゃんと努力してる。
言われたことをやるだけじゃない。
どうすれば良くなるか、考えてる」
「美しくなろうとしてる」
その一言が、胸に落ちた。
「だから――」
エリックは、きっぱりと言った。
「努力して、隣に立とうとしてるやつを、
俺はバカになんて、しない」
その言葉は、飾り気がなくて。
でも、妙に胸に残った。
……ああ。
この人、本当に厳しいけど。
ちゃんと、人を見てる。
意外と――
いいやつだ。

