訓練の合間、空いた時間を使って――
オリバー団長が、約束通りダンスを教えてくれていた。
「まず立ち位置だ。
それと……そう、腰に手を」
「こ、こう?」
「そうそう」
……意外と、難しい。
「ちょっと、ちょっと待ってくれ!!」
突然、割り込んできた声。
「なんだ、エリック?」
「なんだじゃないですよ!!
なんで俺が、こいつのダンス相手なんですか!!」
噛みつくように叫ぶ。
「あ、えっと……お願い。
エト? エリ? エリクソ?」
「エリックだ!!
人をハナクソみたいに言うな!!」
くわっと、全力で怒鳴られる。
……名前、覚えてなかったのは悪かったか。
「まあまあ、いいじゃないか」
オリバー団長が、落ち着いた声で間に入る。
「騎士として、
剣だけでなく社交も身につけようとしている。
それなら、協力すべきだろう?」
「……はあ。団長がそう言うなら」
エリックは渋々、肩を落とした。
「でも言っときますけど、
俺、手加減しませんからね」
「それでいい」
「あと、テオだったか?
お前、敬語使え! 敬語!」
「わかった」
「わかりましただろうが!!」
……早速か。
エリックのレッスンは、想像以上に厳しかった。
「おい、前を見ろ。
下を向くな!
足を踏むな!!」
「うん……」
いや、無理だろ。
同時にそんなに意識できない。
――む、難しい。
こんなに難しいのか、ダンスって。
「とにかく姿勢だ!
お前は姿勢が悪い!
腹に力を入れろ!」
ぐいっと背中を叩かれる。
「それから、顎を引け」
言われた通りにすると、首が少しきつい。
「紳士としてエスコートできないなんて、
美しくない!!」
……美しい、か。
剣なら、
相手を倒すために構える。
でも、これは違う。
相手を導くための姿勢だ。
そう思った瞬間、
言われていることが、少しだけ腑に落ちた。
エリックは相変わらず口は悪いが――
アドバイスは、やけに的確だった。

