数日後。
研究施設の奥、
自然環境を再現した広い水槽の前に立っていた。
透明な水の中で、
白ひげちゃん――エンジェルドラゴンは、ゆったりと泳いでいる。
「……元気そうですね」
トワが、小さく安堵の声を漏らす。
「食事も問題なし。
環境にも、すぐ慣れたそうよ」
そう言いながらも、
私は視線を水面から離せなかった。
その時。
白ひげちゃんが、ふっと動きを止める。
こちらに気づいたように、
ゆっくりと泳いできて――水面近くで、尾を揺らした。
ふわり。
甘い香りを探すみたいに、
小さく鼻先を動かす。
「……?」
次の瞬間、
水面に、くるりと小さな渦が生まれた。
ほんの一瞬、
食卓に運ばれる湯気を追うような風。
「……あ」
レオが、目を丸くする。
「もしかしてさ……」
白ひげちゃんは、もう一度だけこちらを見て、
ひげをふわりと揺らした。
――まるで、
“また、あれを作ってくれ”
と言っているみたいに。
「……図々しい魚だな」
そう言いながら、レオは笑った。
白ひげちゃんは尾を揺らし、
ゆっくりと水槽の奥へと泳いでいく。
最後に、もう一度。
振り返る。
風が、くすっと笑うみたいに通り抜けた。
――きっと、あの魚は覚えている。
レオの料理のあの味を。
「……私の料理人を引き抜こうとしてるのかしら、白ひげちゃん」
「だめですよ!」
即座に返ってきた。
「俺はお嬢さんの専属料理人ですから」
そう言ってから、少しだけ声を落とす。
「……でも、また作ってあげるからな」
レオがひらりと手を振ると、
白ひげちゃんは嬉しそうに、ひげを揺らした。
研究施設の奥、
自然環境を再現した広い水槽の前に立っていた。
透明な水の中で、
白ひげちゃん――エンジェルドラゴンは、ゆったりと泳いでいる。
「……元気そうですね」
トワが、小さく安堵の声を漏らす。
「食事も問題なし。
環境にも、すぐ慣れたそうよ」
そう言いながらも、
私は視線を水面から離せなかった。
その時。
白ひげちゃんが、ふっと動きを止める。
こちらに気づいたように、
ゆっくりと泳いできて――水面近くで、尾を揺らした。
ふわり。
甘い香りを探すみたいに、
小さく鼻先を動かす。
「……?」
次の瞬間、
水面に、くるりと小さな渦が生まれた。
ほんの一瞬、
食卓に運ばれる湯気を追うような風。
「……あ」
レオが、目を丸くする。
「もしかしてさ……」
白ひげちゃんは、もう一度だけこちらを見て、
ひげをふわりと揺らした。
――まるで、
“また、あれを作ってくれ”
と言っているみたいに。
「……図々しい魚だな」
そう言いながら、レオは笑った。
白ひげちゃんは尾を揺らし、
ゆっくりと水槽の奥へと泳いでいく。
最後に、もう一度。
振り返る。
風が、くすっと笑うみたいに通り抜けた。
――きっと、あの魚は覚えている。
レオの料理のあの味を。
「……私の料理人を引き抜こうとしてるのかしら、白ひげちゃん」
「だめですよ!」
即座に返ってきた。
「俺はお嬢さんの専属料理人ですから」
そう言ってから、少しだけ声を落とす。
「……でも、また作ってあげるからな」
レオがひらりと手を振ると、
白ひげちゃんは嬉しそうに、ひげを揺らした。

