すると魚――いや、“それ”が、ぴくりと身を震わせる。
風が、ひとひら撫でるように動いた。
「……まさか」
喉が、ひくりと鳴る。
「これが……エンジェルドラゴン?」
沈黙。
「……とりあえず、持ち帰りましょ」
私は網の中の魚を見下ろして言った。
「え、食べないんですか?」
レオが目を丸くする。
「この大きさなら、煮付け……いや、素揚げ?
それとも――」
言いかけて、レオは口を閉じた。
魚が、ぴくりと尾を揺らす。
その瞬間、風が一度だけ逆巻いた。
まるで怒っているようだ。
「……やめとこ」
「ですよね」
3人の意見は、自然と一致した。
「珍しい魚かもしれないし、
下手に手を出すより、誰か詳しい人に見せた方がいいわ」
「そうですね。毒性があったら怖いですし」
私の意見にトワも頷く。
「じゃあ、水槽を用意します?」
レオがこちらを見る。
「……いや、それは違う」
「え?」
トワとレオが目を丸くする。
「これは……水槽に入れると、多分、まずい」
言いながら、自分でも理由をうまく説明できなかった。
ただ、本能的に、そう思った。
「桶で。
風が抜けるように」
「……了解です!」
レオが元気に手を上げる。
その後、魚は驚くほど大人しく、
まるで“連れていかれる”ことを受け入れているようだった。
この時点では、
誰もまだ――その正体を深く考えていなかった。

